「チェンジ(変革)」。その看板の下でバラク・オバマ氏が米大統領になって7年になる。

その挑戦を阻む壁はなんと厚かったことか。誰よりも大統領自身が痛感しているだろう。

もはや米国だけの力でもたらせる変革は限られる時代だ。

多極化する世界のなかで、米国はどんな国家像を描くのか。きのうの任期最後の一般教書演説には、次の大統領に託すだろう重い悩みがにじんでいた。

「世界の警察官にならずに、世界をリードする方策は何か」

それは任期を通じた模索であり、いまも答えはない。ただ、この7年間で改めて見えたのは、いまも世界の安定に必須の大国であるという現実だ。

国内経済の再建と、イラク、アフガニスタンからの撤退。内向きの目標を背負ったオバマ政権は必ずしも国際関与に積極的といえないことも多かった。

米国の存在感が後退した中東は、シリアの内戦をはじめ混乱が深まった。米国も欧州も和平調停に出遅れたウクライナは、流血の惨状になった。

米国を再び中東に引き戻したのは、イラク戦争が生んだ過激派「イスラム国」(IS)である。過去の単独主義が残す責任から逃れることもできない。

いま懸念されるのは、米国が世界と健全にかかわりあう視点が、野党共和党に欠落しているように見えることだ。

ISとの戦いを「第3次世界大戦」と呼び、支配地域の「じゅうたん爆撃」を唱える。イランの核をめぐる合意の破棄と、対決姿勢を求める。

大統領選の候補選びの論戦でそんな主戦論が幅をきかせるのは、国民に広がるテロの不安に乗じたポピュリズムである。

難民を犯罪者呼ばわりし、イスラム教徒の一時入国拒否を唱える暴論は、移民の国家として自由と平等を求める米国の理念を忘れたかのようだ。

きのうの演説でオバマ氏は訴えた。「時代の変化に私たちは内に閉じこもり、恐怖で応じるのか。それとも、みんなで協調して成し遂げられることに自信をもち、未来に向かうのか」

米国だけでなく、日本を含む世界もその岐路にある。紛争や難民問題など地球規模の努力が今ほど求められる時代はない。

オバマ氏が自賛した成果は、昨年の気候変動をめぐる国際合意だ。米国の手柄ではない。だが、米国が積極的に他国と手を組み、世界が意義を確信した。いかにもオバマ流外交だ。

残り任期1年。核軍縮や中東・朝鮮半島問題などで、最後の遺産づくりを望みたい。