甘利経済再生担当相の現金授受疑惑で与野党がざわつく中、安倍首相がきのう、施政方針演説に臨んだ。

首相が演説で掲げたキーワードは「挑戦」である。その対象として、世界経済の新しい成長、地方創生、1億総活躍、外交の4分野を挙げた。

その中で注目すべきは、この春にもまとめる「1億総活躍プラン」の中で、「同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えだ」と初めて明言したことだ。

同一労働同一賃金は、正規雇用と非正規雇用の賃金格差を正すため、民主党など野党や労働界が強く訴えてきた政策だ。一方で、経済界寄りの自民党が積極的だったとは言い難い。

その姿勢を一転させたのは、夏の参院選に向けて自民党としてより幅広い層にアピールするためには、不平等の是正や、成長の果実の分配にも目配りが必要だという思いなのだろう。

首相が本気で同一労働同一賃金の実現に向けて努力するのなら大いに結構だ。ただ、負担増となる企業とどう折り合いをつけるかなど、ハードルが高いのも事実だ。首相は「挑戦」すると言った以上、経営側への説得をはじめ、どう実現していくのか、具体策が問われる。

一方、首相は憲法改正について「私たち国会議員は正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく。その責任を果たしていこうではありませんか」と力を込めた。

首相はおとといの参院決算委員会では「いよいよどの条項について改正すべきか、新たな現実的な段階に移ってきた」と答弁。自民党が改憲の有力な論点としている「緊急事態条項」の新設についても「大切な課題」だと繰り返している。

首相にとって憲法改正は重要な「挑戦」なのだろう。いまから問題提起をしておくことで、参院選での議論の地ならしをする狙いもありそうだ。安保法制の時のように、選挙前はあまり語らず、選挙後に数の力で押し通そうとするよりは、まだわかりやすい。

半面、国民の人権や暮らしが脅かされるような不備がいまの憲法にあるのか、あるならばどう改正すべきなのか、そうした論点を首相は語っていない。緊急事態条項がそれにあたるのかどうかもはっきりしない。

ここは野党の出番である。

週明けから、国会は本格的な論戦に入る。甘利氏の疑惑などただすべき点は厳しく追及しつつ、首相が語ったこと、語っていないことの双方について、詰めた論戦を求めたい。