毎日新聞2016年2月11日 東京朝刊
政治とカネの問題などをテーマに衆院予算委員会で集中審議が行われた。甘利明前経済再生担当相や元秘書による口利き疑惑は辞任後、むしろ深まっている。自民党は甘利氏らの予算委での参考人招致に応じ、疑惑解明に協力すべきだ。
甘利氏は千葉県の建設会社と都市再生機構(UR)の補償係争をめぐる疑惑で辞任した。甘利氏は本人や元秘書が会社側から現金を受け取ったことを認めたが、「秘書は話し合いの状況を確認しただけだ」と口利きについては否定していた。
だが、「口利きではない」との説明には疑問がある。とりわけ不透明なのは、2013年夏にURから建設会社に2億2000万円の補償金が支払われた経緯である。
建設会社の総務担当者は毎日新聞の取材に対し、URの当初の補償提示額は約1600万円だったが、甘利氏秘書に解決を依頼した後に1億8000万円になり、交渉や電話で再増額を求めた結果、2億2000万円に上積みされたと述べた。
総務担当者は建設会社に入金された補償金のうち1000万円を引き出してその日に元秘書に渡し、元秘書はそのうち500万円を受け取ったのだという。補償金を口利きで増額した見返りだと取られかねない。
集中審議では、総務担当者への聞き取りを踏まえた補償交渉に関する質疑が行われた。UR側は基準に従った妥当な金額だと主張したが、具体的な経緯は明らかにしなかった。これでは不十分だ。
URと元秘書の面談は10回を超し、補償問題をめぐっては元秘書が昨年10月「少しイロをつけて」などとURに要請したという。閣僚の秘書から何度も呼び出されるだけでも十分な圧迫ではないか。
甘利氏側の関与はあっせん利得処罰法違反ではないかとの指摘もある。甘利氏は主要閣僚として16年度予算案編成にも関わっただけに、予算委で自ら進んで説明すべきだ。安倍晋三首相も国会任せにせず、甘利氏の招致を主導する責任がある。
第2次安倍内閣の発足以来、4閣僚が政治とカネをめぐり辞任している事態は深刻だ。野党側の企業・団体献金の禁止要求に対し、首相は慎重姿勢を示している。だが、何の手立ても講じずに済む状況ではない。
民主党は質疑で現金による献金の授受を禁じ、銀行振り込みで記録を残すことも主張した。首相が企業献金を「民主主義のコスト」と説明するなら、拒む理由などないはずだ。
「大臣規範」を改定し、閣僚が在任期間中の企業献金の受け取りを自粛することも不当な口利き防止に一定の効果があろう。制度改革にも踏み込む時である。
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