メディア研究における総力戦体制
佐藤卓己 (京都大学)
佐藤卓己 (京都大学)
・・・戦時下における「思想戦の科学」はストレートに戦後は「民主化の科学」
に変貌しています。そこには何らの転向も意識されていないわけです。
彼らは方向こそ違うものの (本当に違うかどうかは「経済戦」という言葉
の存在を考えると微妙ですが)、高度国防国家建設と高度経済成長を
同じ国民動員研究の発展と考えていたようです。
小山は1953年、「東京大学新聞研究所紀要』第2号でこう書いています。
「輿論指導の手段に関しては第一次世界大戦までは専ら宣伝 propaganda
と云う言葉が使用されていた。然し両大戦を通じ事実的にも意識的にも宣伝とは、
『嘘をつく技術』と云う風にとられてしまった。
それで宣伝のこの悪い意味を避けるため、プロパガンダと云う代わりに
マス・コミュニケーションと云う言葉が使用されるようになったのである。」
すでに言及しましたが、プロパガンダとマス・コミュニケーションは、
小山においては自覚的に同じ概念だったわけです。
だとすれば、日本のメディア研究、あるいは教育学もそうかもしれませんが、
「ポツダム科学」だという理解をもう一度再検討する必要があると思います。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006272175
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