政府は4日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設を巡る代執行訴訟について、国が訴訟を取り下げて移設工事を中止する福岡高裁那覇支部の和解案を受け入れることを決めた。県は既に和解案の受け入れを裁判所に伝えており、県幹部は「和解が成立した」と述べた。安倍晋三首相は、夏の参院選を前に政府と県の対立が続けば、移設が一層困難になりかねないと判断した。【高本耕太】
首相は4日昼、岸田文雄外相、中谷元(げん)防衛相ら関係閣僚を首相官邸に呼び、和解案について「政府の方針を決めた」と説明した。
首相はその後、首相官邸で記者団に「国と県が訴訟合戦を繰り広げている関係が続けば、普天間の現状がこれからも何年も固定化されかねない。国として裁判所の和解勧告を受け入れる決断をした」と述べた。移設計画については「普天間全面返還のためには辺野古への移設が唯一の選択肢だとの考え方には変わりない」と重ねて表明した。
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しに関する代執行訴訟で、那覇支部は移設が前提の「根本的」と、国が移設を中断する「暫定的」の二つの和解案を提示した。2月29日に結審し、判決期日が4月13日に設定されたが、那覇支部は、暫定案をより具体的に修正した案を基に、国と県に和解協議の継続を促していた。
2月29日の代執行訴訟の第5回口頭弁論では、名護市の稲嶺進市長が、新基地建設によって「騒音被害や事件、事故の増加など地域住民の生活の安定を脅かす」と指摘した。
移設計画を巡っては、知事の取り消しの効力を執行停止とした国土交通相の決定に関する訴訟も結審し、3月17日に判決が言い渡される予定になっている。この訴訟で、県は「国という同一の行政主体内部で(知事の取り消しを)覆しており、プレーヤーとアンパイアが同一、不公正だ」と主張している。また、県は判決までの間、暫定的に国交相の執行停止決定の効力を止める措置も申し立てている。
一方、ハリス米太平洋軍司令官は米上院軍事委員会で、移設計画が2年遅れて2025年にずれ込むとの見通しを示していた。
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