1カ月におよぶ所得税の確定申告期間も、締め切りまで1週間。全国各地の税務署で混雑がピークを迎えている。

確定申告するのは、個人の事業主が中心だ。会社勤めなどの給与所得者、いわゆるサラリーマンは、源泉徴収で毎月の給料から税金を天引きされている。年末調整もあるから、税務署とは関係ない――。そう思う人が少なくないかもしれないが、実際はそうではない。

2014年の所得をめぐる、1年前の申告状況を見てみよう。確定申告した人は2139万人で、このうち44%の946万人がサラリーマンだった。

サラリーマンでも、年間の給与収入が2千万円を超える人は確定申告をする必要があるが、そうした人は少数派だ。

申告したサラリーマンの7割が還付、つまり納めた税金の一部を取り戻した人たちで、前年より3%余り増えた。医療費の自己負担額が一定額を超えた人や、住宅ローンを借りた人、要件を満たす寄付をした人などがそれにあたる。

税金の還付を受けることは、納税者の権利だ。あてはまる人はおっくうがらずに申告し、「税とは何か」を考える機会としてほしい。

税金をめぐっては「とられる」と表現されることが多いが、そこには国や自治体に判断を任せ、それに従うという「お上意識」が潜んでいないか。

社会を支えるための公共サービスを、主権者として行政にゆだねる。その費用をまかなうのが税金だ。そうとらえれば税制への関心は高まり、税金の使い道、つまり予算を見る目も厳しくなるだろう。

いまのように借金を膨れあがらせ、将来世代へのツケ回しを重ねるばかりでよいのか、思いも深まるはずだ。

大学関係者らが立ち上げた「民間税制調査会」は、昨年末まとめた改革案で年末調整の廃止を提言した。毎月の源泉徴収は続けながら、サラリーマンについても年1回の過不足の調整で確定申告に向き合ってもらおうとの構想である。

税務署の要員問題も絡んで直ちに実現するのは難しいだろうが、電子申告の普及も見すえれば一考に値するのではないか。源泉徴収や年末調整は、戦費調達の狙いもあって1940年代に導入された制度だ。米国は源泉徴収だけで年末調整はなく、フランスは源泉徴収自体がないなど、各国の制度は多様だ。

芸能人らが確定申告を呼びかける。注目されるのがそんな行事ばかりでは、もったいない。