運転中の九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)周辺で放射線量を監視する放射線モニタリングポストのうち、ほぼ半数が高い放射線量を測れないことがわかった。運転差し止めの仮処分決定で止まった関西電力高浜原発(福井県)の周辺では、多くの未設置地点があった。

事故時に住民を避難させる必要があるかどうか、判断するためのデータが得られないことを意味している。それでも、再稼働させている。住民の安全をどう考えているのだろうか。

ポストで原発事故を監視する立地・周辺自治体は、少なくとも整備を終えるまで原発を止めるよう電力会社に申し入れるべきである。

福島第一原発事故を経て、国は原子力災害対策指針を改めている。大事故発生時に原発5キロ圏の住民は直ちに避難する。5~30キロ圏の住民は屋内退避を原則にしつつ、地区の基準ポストで線量が「1時間に500マイクロシーベルトに達したら直ちに」「1時間に20マイクロシーベルトが1日続いたら1週間以内に」避難する。いずれも指示するのは国になっている。

ポストの整備が不十分だと、地区ごとの判断が遅れたり誤ったりしかねない。ポストは一部国のお金も使いながら自治体が整備するものだから、特に立地自治体が不十分な状態で再稼働に同意したのは納得できない。

原子力規制委員会も「住民避難は権限外」と言って済むわけではない。福島第一の事故で活用できなかった放射性物質の拡散予測システムSPEEDI(スピーディ)に代えて、ポストの実測値で避難を判断することにしたのは規制委だったのだから、実際に使えるかどうか、見るべきだろう。

新規制基準を厳しくしても事故リスクをゼロにはできないから、事故が起きる前提で備えなければいけない。国際的な常識をようやく採り入れたはずなのに、避難についてここまでずさんでは、話にならない。

「住民を災害から守るのは自治体の責務」という原則には一理ある。しかし、原子力防災については、その原則によって国の役割と責任を免じるべきではない。

避難計画の実効性は国、特に専門知識を持つ規制委が十分なチェックをする仕組みに改めるべきである。立地自治体に加えて、国がダブルチェックすることで、今回のような再稼働は認めぬ仕組みにしてほしい。

住民が個人で判断できる災害もある。しかし、原発事故は違う。国と自治体の役割と責任ははるかに重いはずだ。