- 2016年8月10日

沖縄県北部の小さな村・高江で強行に進められる米軍のオスプレイ離着陸用のヘリパッド建設。現地では反対派住民らがテントを張って抵抗し、機動隊とのにらみ合いが続いている。今月6日には安倍昭恵首相夫人が視察に訪れた。現地からのリポート。
「法治国家なら法的に私たちを連れ出せ!」
沖縄平和運動センターの山城博治議長は県内外から数多く集まった有志の市民らを前に声を枯らし、訴えた。そして、弁護士の小口幸人氏がマイクを引き継ぎ、抗議行動の正当性を解説した。
高江では、警察が法的根拠なく県道を封鎖。機動隊600人の暴力により、座り込みする市民は肋骨を粉砕し、このままでは死人が出る恐れすらある無法状態が続いている。
普段は人口150人ほどの静かな村だ。しかし、リオ五輪開幕と原爆忌の重なる6~8日が市民排除の修羅場になる可能性があるとの呼びかけに全国の有志が呼応。9年前から基地反対活動を続けている地元民に加え、県内外から延べ2000人以上が集まった。これに東京からキー局のテレビ報道クルーが中継車まで出して来沖。結果、焦点の3日間、権力側の暴挙を食い止めた。
「私たちの森に基地は要らない。高江は沖縄の水瓶、命の源である。戦争のための砂利は一粒たりとも渡したくない」
「防衛省に聞きたい。あなたの家の隣に基地が出来たら、あなたは反対しないのか?」
8日午後7時、「N1裏」と呼ばれるゲート前に、スピーカーから悲痛な叫びが響き渡る。集会場では悔しさからか、涙を押し殺す声が漏れていた。
「五輪開幕。広島・長崎への原爆投下。本質的に平和を考えるべき大きなニュースの影で沖縄は泣いている。私たちはいつまで安倍の持ち物=TVの情報に頼るのか?」
「高江の姿は日本の将来の姿だ。人権を無視した暴力的な脅しは“緊急事態条項”の予行演習そのものだ」
現場では今、こんな危機感が共有されている。暴挙は毎度、大きなニュースに隠れて繰り返されてきた。
8日、東京の主要メディアが高江から引き揚げたため、機動隊による強制撤去が9日にも始まるかもしれない。
私たちは知るべきだ。南国特有の豪雨と晴天の間、やんばるの森、夜空には流れ星が無数に瞬いている。しかし、沖縄にはいまだ“戦後”は一度たりとも訪れていない。
(Freelance Journalist・大嶽創太郎)