鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事が九州電力に対し、全国の原発で唯一、営業運転中の川内原発(鹿児島県)1、2号機をいったん停止し、機器を点検しつつ自治体の避難計画への支援を強化するよう申し入れた。

4月の熊本地震の後、住民の間で原発への不安が広がったことを受けての行動だ。

稼働中の原発を止める権限は知事にはない。しかし、三反園氏は7月の知事選で川内原発の一時停止を主張し、再稼働を認めた現職を破って当選した経緯がある。

九電は、知事が示した懸念を正面から受け止めるべきだ。

申し入れでは、機器の点検で原子炉の圧力容器・格納容器など重点7項目を記したほか、原発周辺の活断層の調査や、県民の不信を招かないための適時かつ正確な情報発信を求めた。避難計画については、知事自ら原発周辺の道路や医療・福祉施設を視察した際に寄せられた声をまじえつつ、支援体制を強化するよう訴えた。

いずれも、事故を防ぎ、あるいは事故が起きた場合に被害を最小限に食い止めるために必要なことだろう。

申し入れを受けた九電は「内容をしっかり確認して対応したい」としつつも、原子力規制委員会の審査を経て再稼働した川内原発の安全性に問題はないとの立場だ。しかし、熊本地震では震度7の大地震が連続して起きるという想定外の事態に直面した。それが住民の不安や知事の判断のきっかけとなったことを忘れてはなるまい。

具体的な権限がないとはいえ、原発を抱える自治体のトップが稼働中の原発に真っ向から異を唱えたことに、政府や電力業界は警戒を強めている。九電は一時停止の要求には応じず、稼働中の2基が10月と12月に相次いで迎える定期検査までは動かし続けるとの見方が有力だ。

しかし、点検後に再び稼働させようとする際、知事が九電の対応に満足できなければ、その反対を押し切って動かすことは現実には難しかろう。九電は結局、三反園氏が今回示した課題に対し、納得できる回答を示すしかないのではないか。

東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に対しては、新潟県の泉田裕彦知事がかねて厳しい姿勢をとっている。再稼働したばかりの関西電力高浜原発(福井県)の運転を大津地裁が仮処分で差し止めたことも記憶に新しい。

行政や司法から相次ぐ異議申し立てに対し、電力業界は誠実に向き合うのか。九電の姿勢が大きな試金石になる。