運転中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)を巡り、三反園訓(みたぞのさとし)・鹿児島県知事が2度にわたって即時停止を求めた問題は、九電が拒否の姿勢を崩さず、知事も即時停止は事実上断念する考えを示した。

知事に原発の運転を止めさせる権限はないが、今春の熊本地震で住民の不安が高まったため、三反園氏は要請に踏み切った。一方の九電は、国の原子力規制委員会からお墨付きを得ているとの立場だ。それを止めることになれば他の原発への影響が必至なだけに、国の方針を背負っての拒否だろう。

1号機は10月、2号機も12月に、定期検査で再び止まる。勝負はその後の運転再開時だ――。知事と九電の双方に、そんな思いもあるのではないか。

今回の問題では両者の思惑や駆け引きが注目されがちだが、大事なのは住民の安全安心を高めることである。両者は住民本位で協議を続け、必要な対策を実施していく責任がある。

これまでのやりとりで、知事は九電から、定期検査とは別に「特別点検」を行うこと、避難用の車両を増やし、避難道の改善を支援することなど、追加の安全対策を引き出した。だが、課題はなお山積している。

避けて通れないのが、原発事故時の屋内退避の是非だ。

国の指針は、放射性物質が外に漏れる危険性が高い場合、原則としてまず原発から5キロ圏内の人が避難し、5~30キロ圏の人は自宅など屋内で待つことになっている。避難が集中して混乱する事態を避けるためだ。

しかし熊本地震では震度7の大地震が連続し、多くの家屋が倒壊した。余震も続き、大勢の人が車中泊をしいられた。道路や橋、避難所も各地で壊れた。

地震と原発の複合災害を考えると、指針に基づく避難計画は机上の空論ではないか――。熊本地震後、そうした不安が住民の間で広がり、三反園氏の要請につながったはずだ。

「屋内退避」は、原発周辺の全国の自治体に共通する問題でもある。朝日新聞社がこの夏に行ったアンケートでは、回答した150余の自治体のうち、「不安がある」が4割を超え、「指針を見直す必要がある」も2割強に達した。

三反園氏は近く、公約していた有識者組織「原子力問題検討委員会」を設ける。避難計画をはじめ幅広く課題を検証し、九電も真摯(しんし)に対応するべきだ。

知事と九電は、これまでのやりとりを土台にして、全国での検討を引っ張る意気込みで議論を尽くしてほしい。