朝日新聞 2016年9月22日
■視点
もんじゅ、廃炉へ 閣僚会議で「抜本的な見直し」合意
ほぼ20年間止まっている高速増殖原型炉もんじゅに、やっと「廃炉」の方向性が示
された。遅すぎた決定だが、「何があっても変わらない」と言われてきた日本の原子力
政策が初めて変わる。一つの前進だ。
問題はこの後だ。
もんじゅが廃炉の方向に動けば、核燃料サイクルをめざす路線も大きく変わることに
なる。
しかし、政府は高速炉開発会議を新設して「核燃料サイクルを推進する」と明らかに
した。あたかも、従来路線を継承すれば、何も問題が発生しないかのような方針だ。
これはとても認められない。もんじゅの開発当初からは約1兆円が投じられたのに、
約20年間も停止した。時間とお金を浪費し、原発開発の路線をゆがめた責任はだれに
、どんなシステムにあるのか。まず、これらの総括が必要だろう。
そしてはっきりさせなければならないのは、核燃サイクルには、安全性など技術的な
問題があるだけでなく、経済性がないということだ。
再処理で取り出したプルトニウムを使うサイクルは、ウラン燃料を使う普通の原発よ
り高くつき、割に合わない。今や多くの国でプルトニウムは「有用な資源」というより
、「やっかいなもの」になり、「捨てる研究」さえ行われている。
高速増殖炉ができても、サイクルは歓迎されない割高のシステムといえる。
政府に求められているのは、過去半世紀の原子力の歴史を振り返ることで「核燃サイ
クルの時代は来なかった」と認め、そのうえで政策をつくることだ。
福島第一原発事故を経た日本社会では、原発はほとんど動いていない。社会の意思は
「原発をできるだけ少なく」だろう。民意に沿う方向に原子力政策を変える。今回の決
定をそのきっかけにしたい。(竹内敬二)
MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace