参院予算委員会がきのう始まり、民進党の蓮舫代表が質問に立った。

注目されたのは、安倍首相との直接対決よりむしろ、稲田防衛相とのやりとりである。

蓮舫氏が取り上げたのは、自民党が野党だった時代の月刊誌「正論」(2011年3月号)での稲田氏の発言だ。

「自分の国を自分で守ることを選ぶのか、子ども手当を選ぶのか」

当時の防衛費は約4兆6800億円。稲田氏は、民主党が約束した子ども手当の約5兆5千億円より少ないと指摘。「子ども手当分を防衛費に回せば、軍事費の国際水準に近づく」と防衛費の倍増を訴えていた。

稲田氏はきのうの予算委で、こう軌道修正した。「子育て政策は大変重要だ。しかしまた、我が国を守るための防衛は万全を期さなければならない」

蓮舫氏は同じ月刊誌で稲田氏が「長期的には日本独自の核保有を、国家戦略として検討すべきではないか」と語っていたこともただした。

稲田氏は「非核三原則を守り、核のない世界を全力を挙げて実現していく」と答弁。歴代自民党内閣の非核政策を継ぐ、まっとうな主張に転換した。

稲田氏の発言が変貌(へんぼう)したこと自体は当然であり、歓迎する。見過ごせないのは、ではなぜ持論を一変させたのか、その説明が足りないことだ。

防衛相になり、経験の乏しかった防衛政策を勉強して一議員時代の勇ましい発言の誤りを悟ったのか。それとも閣僚でいる間は、内閣の方針に沿った発言に努めるということなのか。

5年前の発言は、単なる過去の話として片付けることもできないし、稲田氏ひとりの思いとも言えない。

中国の軍拡や強引な海洋進出はやまず、北朝鮮は核・ミサイル開発を重ねる。日本政府内では防衛費の倍増を望む声も出ている。次の中期防衛力整備計画に向けて、防衛費増額に向けた圧力が強まるのは必至だ。

核保有についても、第1次安倍内閣の麻生外相が06年に「隣の国が(核兵器を)持つとなった時に、一つの考え方としていろいろな議論をしておくのは大事だ」と発言。核保有論は今も政界でくすぶっている。

野党の側も稲田氏の発言の整合性を問うだけでは足りない。

稲田氏を防衛相に起用した安倍首相の狙いは何か。

防衛費はどの程度が適正か。核なき世界の実現のため、どう行動すべきか。さらに深掘りした与野党の議論を望む。