9年後に原発をゼロにする。この目標に向けて、台湾が一歩を踏み出した。日本の福島第一原発事故から教訓を真剣に学んだ取り組みであり、その行方に注目したい。

台湾は日本と同じく、資源に乏しい。中国と対峙(たいじ)し、国際的に孤立していく緊張の中で1970年代に原発導入を図り、現在は3基が稼働している。

だが地震などの自然災害が多いことも日本と共通する。福島の事故を契機に、脱原発の市民運動が大きなうねりとなった。建設中だった第四原発でトラブルが続いて原発政策全般への不信感が広がった面もある。

こうした動きを受け、民進党の蔡英文(ツァイインウェン)氏は年初の総統選で脱原発を公約の一つに掲げて当選した。同時実施の議会選も民進党が過半数を占め、政策決定の障害はなくなった。関連法の改正案は年内成立の見込みだ。

原発は台湾の発電容量の14%を占める。これから9年でゼロにするのは高いハードルかもしれない。電力不足や料金高騰を不安視する声は根強い。

だが、李世光経済部長(経済相)は「廃棄物の問題を子孫に残さないためにどんな政策が必要かということこそを考えるべきだ」と訴える。原発問題を真正面から問う重い言葉だ。

台湾では離島に低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設があるが、地元の反対運動が続いている。

原発の代わりに自然エネルギーの比率を今の4%から20%にする。主力は太陽光と風力だ。蔡政権が方針を明示したことで産業界は動きやすくなる。関連分野の雇用への期待が高まる。22年に原発をなくすドイツでも同様の動きが起きている。

台湾企業は新技術を素早く吸収し、普及しやすいものへ改良するのが得意だ。節電のノウハウも磨く余地があろう。台湾と関係が深い日本企業にとっても好機ではないか。

原発が国民党独裁政権下で始まった事業であったのに対し、民進党は以前から反原発の姿勢で、電力事業へのしがらみがない。政権交代がそのまま政策転換を生む形になった。

台湾社会ではすでに原発を疑問視する声が主流だった。前の国民党政権も、世論に押されて第四原発建設を凍結した。脱原発は、政治が指導力を発揮したと同時に、政治が民意を正確に反映した結果といえる。

日本でも原発の再稼働への懸念は強く、最近も鹿児島、新潟両知事選の結果に示された。しかし国策に大きな変化がないのはなぜか。台湾の決断は日本のさまざまな問題を考えさせる。

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コメント:壊憲・戦争法・原発・原爆・基地・TPP等民意を反映していない安倍政権!!!