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長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実 (ちくま新書) by limitlesslife
November 1, 2016, 12:15 am
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(書評より)「病院から在宅へ」の政策転換の中で起こっている
在宅医療・介護の現場での諸問題を取り上げている

7月28日に発売された『ルポ 看護の質』(小林美希著 岩波新書)で、日本の高齢
者医療・看護の実態を知り、暗澹たる気持ちにさせられていた折り、本書の発売を知り
、在宅医療・介護に焦点を当てた本書も読まざるを得ない気持ちにさせられた。

その本書の第一章でルポされている家族による悲惨な「介護殺人」や、辛うじてそれを
踏みとどまった諸例は、「明日は我が身」で、とても他人事では済まされない痛ましい
事例ばかりだ。長生きした最後に、介護する家族を「介護殺人」を考えざるを得ない状
態にまで追いつめてしまう国にしてしまった政治家の責任は大だと思う。第一章では、
その一方で、診療報酬の設定の仕方の問題点に目を付けて、在宅医療を「金のなる木」
に変えて営利だけを追求する狡猾な医療機関などの存在もルポしている。

第二章では、厚労省がその診療報酬を改定して、入院患者が早く退院するよう仕向け、
「病院から地域へ」と医療政策の軸を移していることを紹介しているが、在宅医療の現
場は、厚労省の机上の青写真どおりにはいっておらず、「病院から地域へ」の政策転換
は、このままでは機能しないとしている。

第四章では、介護報酬の問題を取り上げている。国が一つ覚えで地域包括ケアを唱えて
いる間に、2015年春の介護報酬の引き下げで地域医療が潰されようとしているとし
て、介護報酬の引き下げという官僚の「さじ加減」で、ある地方の診療所が存亡の危機
に瀕していることをルポしている。政府は、病院から地域へ、施設から在宅へと言って
、財源不足を理由に『自助自立の介護』の必要性を説いているが、高齢化が進んだ地域
では老老介護が当たり前、高齢者が住み慣れた地域で暮らすには介護の絶対的なマンパ
ワーが足りず、介護報酬を引き上げなければ人材は枯渇するとするとともに、地方の医
療、介護の状況は、都市部の高齢化ともリンクしており、「2025年問題」が深刻な
のは大都市圏の方であり、この状況を都市部の人たちが「対岸の火事」と眺めていたら
、手痛いしっぺ返しを食うだろうとしている。

私は、高齢者が極力住み慣れた自宅で生活できるようにしようとする厚労省の「病院か
ら在宅へ」の方針が間違っているとは思わない。しかし、現在のように、医療・介護の
十分なフォロー体制がないまま在宅に放り出されては、家族は疲弊するばかりであり、
第一章で挙げられているような痛ましい事件は、今後とも後を絶たないと思う。政府に
は、財源不足を言い訳にしたり、診療・介護報酬の増減による画一的な誘導政策を打ち
出すだけではなく、家族が安心して在宅で高齢者を介護できるような木目細やかな政策
を打ち出してほしいと、切に思う。

長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実 (ちくま新書)

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace


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