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2016年は分水嶺か ビル・エモットさん、寺島実郎さん by limitlesslife
November 15, 2016, 2:38 pm
Filed under: アメリカ合衆国(米国)

(耕論)2016年は分水嶺か ビル・エモットさん、寺島実郎さん
朝日新聞 2016年11月12日

米国民がトランプ氏を次期大統領に選んだ。英国民は6月、欧州連合(EU)からの
離脱を選択した。いずれも人々は既得権益層にノーを突きつけ、国内回帰を求めた。世
界は、統合や多様性を認めるより、分断や他者の排斥に傾き始めたようにも見える。2
016年は分水嶺(ぶんすいれい)なのか。

■金融危機の禍根、一ログイン前の続き気に噴出 ビル・エモットさん(英エコノミ
スト誌元編集長・ジャーナリスト)

トランプ氏当選が衝撃的なのは、彼が1945年以降の戦後国際秩序の基本的な枠組
みを完全に拒絶するか、距離を置くことを訴えている点です。特に貿易の面では極めて
保護主義的な対応です。選挙中の発言がどこまで実行されるかにもよりますが、米国の
進む方向は劇的に変化するでしょう。より敵対的で反自由主義(リベラル)的な国、孤
立主義的で以前よりも世界に対して閉ざされた国に向かう。

貿易面以上に深刻なのは北大西洋条約機構(NATO)への敵意です。条約5条の集
団防衛にも疑義をはさんでいる。日本を含む同盟国に防衛費と米軍駐留経費の負担増を
求め、ドイツ、英国、日本よりもロシアに対してより親近感を抱いているように見える

それでも人々が投票したのはなぜか。それは2008年の金融危機、リーマン・ショ
ックのせいです。それこそがトランプ氏の勝因でしょう。危機は人々の生活、雇用、貯
蓄に壊滅的な打撃を与えた。一方で巨大な政治力を持つ銀行が規制を逃れ、十分に処罰
されなかった。資本主義と民主主義がともに機能不全に陥ったのです。09年に誕生し
たオバマ政権と、米議会はこうした問題点を解決することができなかった。

英国が「ブレグジット」(英国のEU離脱)を選んだこととも共通します。移民問題
とは結局、経済的絶望、悲観主義の身代わりなのです。労働者や失業者などの間で、以
前は投票しなかった人々が投票した点も同じです。ブレグジット、トランプ現象、各国
のポピュリズムは、それ自体、民主主義の失敗ではありません。民主主義の失敗は08
年にこそあったのです。

トランプ次期米大統領は短期的には経済的な成果に焦点を当て、国際問題ではあまり
敵対的な対応をしないのではないか。米国の経済、雇用や収入問題こそ彼の人気を保つ
ものだからです。まずは財政的な刺激策やインフラ整備に向けて議会から合意を得よう
とするのではないか。オバマ大統領が導入したオバマケア(医療保険制度改革)を廃止
することはかなり早い段階で起こりうる。

貿易問題では、環太平洋経済連携協定(TPP)、欧州との環大西洋貿易投資協定(
TTIP)を実現させることはもはや完全に不可能でしょう。(再交渉を主張している
)北米自由貿易協定(NAFTA)も危うい。同協定の撤回はメキシコに対して取り得
る最も容易で見えやすい行動です。「国境に壁を造るか、移民規制の提案がなければ、
NAFTAから離脱する」と取引材料として使う可能性があります。

懸念材料は新たな危機が起きる可能性があるなか、どう対応するか、ということです
。経済危機か外交危機かは予測できない。トランプ氏は危機に対応するにはあまりにも
激しい気性です。対応を誤れば、世界は激しく傷つきます。

欧州の右派勢力にも大きな影響を及ぼすでしょう。もはやフランス大統領に(国民戦
線の)ルペン氏がなる可能性を完全には否定できないでしょう。世界経済や政治には、
日没とまではいかなくても、長い冬が来るのではないか。

アジアでは、中国の立場を強めることになります。アジア各国にとり、米国が従来ほ
ど頼れる同盟国ではなくなるからです。

トランプ勝利後の日本は米国の方向性が不透明になるなか、より強固で一貫した政策
を経済、貿易、安全保障で持つ必要がある。アジアの中で安保協力や友好関係を強める
ことも必要です。韓国、シンガポール、インドネシア、マレーシア、豪州などとの関係
に時間と政治力をもっと充てるべきでしょう。安倍首相は「アジア域内の経済連携協定
を我々で作ろう」とTPPに代わるアジア経済連携協定を呼びかけ主導権を取ることも
できるはずです。

(聞き手 ヨーロッパ総局長・石合力)

Bill Emmott 56年生まれ。オックスフォード大卒。83年から3年間
、英誌エコノミストの東京支局長。93年から06年まで同誌編集長。著書に「日はま
た沈む」ほか。

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■日本、自前の羅針盤持つとき 寺島実郎さん(日本総合研究所会長)

9・11ならぬ、トランプ氏の勝利が判明した11・9の衝撃が走っています。「米
国ファースト」だけが目立ち、「次の世界秩序構想」が見えない。これが混迷の本質で
す。彼には80年代から、2度会いました。人生を貫く価値は「ディール(取引)」だ
けでしょう。思想も哲学もなく、いくらでも妥協する。はったりから落としどころにも
ちこむ手法です。世界の首脳とボス交渉で仕切ろうとするでしょうが、冷戦時の二極構
造と今の違いを思い知るでしょう。

英国がEU離脱を決めた「ブレグジット」に加え、今回のトランプ・ショック。戦後
世界で中心的役割を果たしてきた米国、国民国家を超える統合の実験だったEU。相次
ぐショックで、両方の輝きが後退しました。その本質を直視すべきです。

本質的な深層の課題は「民主主義は資本主義を制御できるのか」です。資本主義は改
革と効率を志向して前進する一方、強欲に走って利益増大が自己目的化しかねません。
だから政治の世界における民主主義が機能し、社会保障で所得を再分配したり、労働法
で働く人を守ったりして制御してきました。そのバランスが崩れ、一部に富が集中し、
額に汗する人が置き去りにされたことが二つのショックの温床です。

バランスが崩れたのは、冷戦終結から約25年経ち、米国流金融資本主義が肥大化し
たからです。産業金融が主流だった金融は「お金を自己増殖させる」ビジネスモデルに
変質しました。マネーゲームが増殖し、グローバル競争が激化。金融資本からの圧力で
各国政府は成長率を上げようと借金に頼った財政出動を行い、日本を筆頭に巨額の債務
を抱えています。世界中の個人もローンまみれです。

肥大化した世界の金融資産は少なく見積もっても地球全体の国内総生産(GDP)の
4倍を超すとされています。あざとい租税回避で税金をきちんととれない。資産は富裕
層に集中する一方、勤労者の所得はむしろ下がり、潜在不安が増殖しているのです。

格差拡大に有効な手を打てず、乱暴な議論が喝采を浴びています。トランプ氏は労働
者層の立場は悲劇的だと強調し、移民のせいだと外に攻撃を向けた。多様性を重んじて
きた米国が、反移民主義、孤立主義などの敵対的ポピュリズム(大衆迎合主義)に誘惑
される構図ができあがったのです。

さらに、「シルバーデモクラシー」の側面も見逃せません。中高年と若者の世代間ギ
ャップが生まれている。ブレグジットでは43歳が賛否の分水嶺で、年齢が高いほど離
脱を支持し、若いほど残留を主張。残留を希望する若者を、高齢者が羽交い締めにして
離脱に連れ出した構図です。米大統領選では若い人ほどクリントン氏への投票が多かっ
たと伝えられています。苦渋の選択の中でトランプ氏の偏狭さや差別に対抗する気持ち
を表明したのでしょう。それを、中高年層の「偉大なアメリカ」への郷愁が押し切った
形です。

資本主義の暴走を止められなかったエリート層が大衆の反逆にあって制御力を失い、
世代間ギャップとも相まって、世界の方向性は、急激に不安定になりました。世界のパ
ラダイムが転換点を迎えています。日本は戦後、米国を通じて世界を見ていればよかっ
た。その時代が終わりつつある。日本は主体性を回復させ、世界観を立て直さなければ
なりません。

自前の羅針盤が必要です。「日米関係維持」のため、在日米軍の駐留経費支出増に妥
協するのではなく、東アジアの安全保障を、軍事力に限らず、柔らかく再設計するべき
です。アジアのリーダーと語り合い、強く感じるのは、「米国との軍事同盟を軸に中国
と向き合おう」というだけでは共感を呼べない、ということ。浩然(こうぜん)の気を
養い、パラダイム転換に対処すべきです。

(聞き手・池田伸壹)

てらしまじつろう 47年北海道生まれ。2009年から多摩大学学長も務める。近
著に「中東・エネルギー・地政学――全体知への体験的接近」。

http://www.asahi.com/articles/DA3S12654552.html

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace


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