Global Ethics


(耕論)トランプ氏とつき合う by limitlesslife
November 22, 2016, 12:40 pm
Filed under: トランプ(ドナルド、大統領)
(耕論)トランプ氏とつき合う
イアン・ブレマーさん、竹内行夫さん、古城佳子さん
朝日新聞 2016年11月19日

トランプ次期米大統領と安倍晋三首相が会談し、信頼関係を築き始めた。ただ、トラ
ンプ氏は選挙中、日本や外国の批判を繰り返してきてもいる。どうつき合うべきか。リ
スクはどこに。

■日中関係悪化のリスク イアン・ブレマーさん(ユーラシアグループ社長)

安倍首相はいち早くトランプ氏に会いに来ました。賢明な判断だと思います。

そもそも首相は9月にクリントン氏と会った後、私に「環太平洋経済連携協定(TP
P)がうまくいくといい」と語り、彼女の勝利を信じていました。トランプ氏の勝利で
、TPPや米国のアジア重視戦略は死んだ。首相は(日本が米国に防衛を頼る)安全保
障面の理由から、日本にはフィリピンのような多くの選択肢がないと理解している。だ
からこそ、すぐにトランプ氏のもとに来たのです。

安倍氏は軍事費を拡大し、憲法改正で自衛隊の活動範囲を広げたいと考えている。ロ
シアとも北方領土問題で合意をしたい。それらはトランプ氏の意向と合う。貿易協定な
どの経済分野を除けば、日米関係はうまくいくでしょう。

ただ日本にとって危険なのは、中国との関係が対立的な方向に進むことです。トラン
プ氏は、貿易や北朝鮮問題で中国に圧力をかけ、米中は難しい関係になる。同氏と日本
の防衛面の協調は、中国にとって問題になりうる。改善しつつある日中関係を維持する
のは、困難になるでしょう。

トランプ氏は同盟関係をビジネスの取引のように見ています。米ロ関係は、クリント
ン氏が大統領になるよりも、格段に改善するでしょう。悪いことではないが、危険なの
は欧州諸国と連携せずに、一人でやろうとすることです。

トランプ氏の外交政策は、中国と似たものになると思います。多国間の枠組みではな
く、単独行動主義。そして価値を全く重んじない。トルコのエルドアン大統領が独裁者
になろうが、ロシアが記者を暗殺しようが、トランプ氏は気にしない。彼に嫌がられな
いよう、他国は「彼を批判しないほうがいい」となる。

TPPについて、トランプ氏の娘婿のクシュナー氏は私に「貿易はやりたいが、より
良い合意でないとだめだ。TPPを破棄すれば、すぐにいい合意ができる」と話してい
ました。しかし、他の参加国は、米国に促されてTPP合意を何年もかけてまとめあげ
てきた。簡単に破棄する米国に信頼性はもうありません。貿易では、異なる政府ごとに
、異なる基準が様々につくられるようになる。今後の世界の貿易協定は、より分断化さ
れることになるでしょう。

20年後に世界史の本を書くなら、「パックス・アメリカーナ(米国の力による平和
)」は1945年に始まり、2016年の米大統領選で終わったと記されるでしょう。

トランプ氏の勝利は、世界貿易やグローバル化という価値を守ることへの米国民の関
心を著しく低下させました。「米国第一主義」は、米国が同盟国への支援を継続しない
ことを意味します。新しい秩序が訪れようとしています。

(聞き手・五十嵐大介)

Ian Bremmer 69年生まれ。米政治学者。著書「スーパーパワー Gゼ
ロ時代のアメリカの選択」で、リーダーなき世界を指摘。

===

■日米同盟、アジア安定の要 竹内行夫さん(元外務事務次官)

トランプ氏が外国首脳の最初の会談相手に日本の首相を選んだ背景には、在米日本大
使館がきちんと準備していたこと、日本が重要な同盟国だということ、トランプ氏が安
倍首相を付き合いやすい相手だと感じたこと――が考えられます。

大統領就任前の会談は異例ですが、政策や人事が固まる前に日本の考えをインプット
することに違和感はありません。会談後に安倍首相が明らかにした内容は、必要かつ十
分だったと思います。詳細に話せば、信頼関係は構築できないでしょう。人間関係と同
じですよ。

今回の会談は、日米の国内だけでなく、アジアや欧州なども注目していたはずです。
選挙中にトランプ氏が繰り返した差別主義、保護主義、孤立主義の発言を軌道修正する
きっかけにしてほしいと願うからです。会談の内容がトランプ氏の胸に残り、じわじわ
と政策形成に影響していくことを期待しています。

ただ、米国には「反トランプ」の人が多くいることも忘れてはなりません。知識人や
、これまでの日米関係をつくってきた人たちの中にも、苦々しく思う人はいるでしょう
。日本が道義性より、目先の利益に走る国というイメージを万が一もたれてしまうと、
長い目で見て日米関係にマイナスになります。

選挙期間中、トランプ氏は米軍駐留経費の負担増を求めたり、核武装を容認したりす
るような発言をしました。しかし、対日外交が選挙の争点だったわけではなく、パニッ
クになることはありません。今回のように早期にあらゆるチャンネルを使って接触し、
日本の考え方を静かに、しつこく伝えることが重要です。

トランプ氏が日米関係を在日米軍の経費負担の観点から考えるのは、安全保障や外交
を経済や通商を通じて考えているからではないか。日米同盟は相互利益の関係です。「
アメリカ・ファースト(米国第一)」を大切にするトランプ氏に、国際秩序なくして米
国の利益は守れないと理解してもらう必要があります。

海洋進出を続ける中国が秩序やルールを変えようとする中、日米同盟は地政学的に戦
略的な意味を持っています。これまで国際社会が築いてきたルールを維持し、中国に対
抗していくには、日本の力だけでは難しいのが現実です。

この地域の今後の発展を考えれば、トランプ氏は、自身のビジネスマンとしての視点
からも、米国は力を保つべきだということに気づくでしょう。東南アジアの国々は、穏
健な米国をこの地にとどめる役割を日本に期待しています。軍事面に限らず、日米同盟
はアジア太平洋地域の発展の基軸になっており、この地域の安定と繁栄のための公共財
なのです。

(聞き手・下司佳代子)

たけうちゆきお 43年生まれ。67年外務省入省。北米局長などを経て2002~
05年に外務事務次官。08~13年最高裁判事。

===

■多国間主義の維持求めよ 古城佳子さん(東京大学教授)

就任前の次期米大統領に日本の首相が会うのは前代未聞です。トランプ氏は選挙戦を
通じ、日本を繰り返し批判してきましたが、他国の指導者に先駆けた会談後、安倍首相
は「信頼関係を築ける」と述べました。また、トランプ氏が当選すれば暴落すると言わ
れていた株価は逆に上昇し、市場はトランプ政権を歓迎しているかのようです。

安心してよいのでしょうか? まだ、安心するのは早計です。一喜一憂せず、冷静に
考えたいと思います。

第2次大戦に至る過程を考えてみて下さい。ウォール街の暴落をきっかけに起きた大
恐慌を克服しようと、当時も国際社会はさまざまな対策を打とうとしますが、結局は各
国が自国優先で「通貨切り下げ」などの保護主義政策を採り、悪循環に陥りました。ブ
ロック経済化の中で日本とドイツが近隣諸国を侵略していきました。

トランプ氏が、多くの米国民をひきつけた「米国第一主義」という方針は、簡単に変
わるようには思えません。米国が自国優先主義や保護主義に傾くのを押しとどめると同
時に、他国にも広がらないよう努力する必要が、日本や各国にはあると思います。

また、トランプ氏が選挙戦で、中国や日本からの輸出を批判する姿は、貿易摩擦が激
しかった1980年代から90年代初頭にかけての議論を彷彿(ほうふつ)させます。
しかし、摩擦を乗り越え、今は格段に貿易が増え、各国の相互依存が進んでいます。こ
うした相互依存を通じ、米経済が最も利益を得ている実態をトランプ氏に理解してもら
う必要があります。

一番心配なのは、トランプ氏が北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋経済連携
協定(TPP)だけでなく世界貿易機関(WTO)から脱退すべきだと発言していたこ
とです。これは、米国が多国間主義に背を向けることを意味します。WTOが95年発
足し、国家の間でルールに基づく紛争処理の体制が整い、中国もその判断を尊重してい
るにもかかわらずです。

米国は第2次大戦後、多国間主義を採り、指導的な立場を占めてきました。国連や、
国際通貨基金(IMF)などのブレトンウッズ体制は、世界の安定を支えてきました。

米国が多国間主義に背を向け、危機がどこかの国で起きたときに、世界は有効な対応
ができるのでしょうか。日本が果たすべきなのは、トランプ政権に、米国が主導してき
た多国間主義が世界にとっていかに重要であり、米国自身がその大きな恩恵を受け、こ
れからも受けるであろうことを繰り返し伝える役割です。そうした努力で、米国を多国
間主義につなぎとめること。それが、トランプ氏とつきあううえで最重要の課題だと思
います。

(聞き手・池田伸壹)

こじょうよしこ 元日本国際政治学会理事長。著書「経済的相互依存と国家」。共著
に「国境なき国際政治」「政治学」。

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace


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