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(耕論)PKOと駆けつけ警護 by limitlesslife
November 24, 2016, 11:59 am
Filed under: 自衛隊(戦争参加、文民統制、・・・)
(耕論)PKOと駆けつけ警護
山本洋さん、岡本行夫さん、伊勢崎賢治さん
朝日新聞 2016年11月15日

国連平和維持活動(PKO)に赴く自衛隊に駆けつけ警護という新任務をつけること
が、きょう閣議決定される。国際的な役割と戦闘に巻き込まれる懸念。岐路のPKOを
どう考える。

■権限、現実に追いついた 山本洋さん(元陸上自衛隊中央即応集団司令官)

自衛隊が最初に南スーダンに派遣されたとき、私は「中央即応集団司令官」として部
隊の統括責任者を務めていました。気温40度を超えるアフリカの地で、水は飲めず、
マラリアの危険もある中でのテント生活。どうすれば隊員が生きていけるか、というと
ころからのスタートでした。
駆けつけ警護について誤解を恐れず言えば、過去のPKOの活動でも、それに近い状
況はあったのです。現場の指揮官が法的に許されるぎりぎりの範囲で悩みながら判断し
てきました。東ティモールでは、隊員を助けに行く名目で、隊員と一緒にいる民間人も
助け出してきました。
「現場にそんな権限はない」と割り切れれば苦労はないでしょう。しかしNGOなど
民間人も現地で活動している以上、様々な事態を想定しておくことは欠かせません。自
衛隊がPKOに派遣されて以来、この20年あまりの課題でした。安保法制により、指
揮官はあらかじめ準備できるようになりました。
「自衛隊は一切、海外に出ていくな」というなら別ですが、国際貢献として自衛隊を
海外に派遣する以上、法律の不備を残したまま送り出すのはやめてほしい。
次の部隊と交代するまで、常に指揮官の胸にあるのは、部下を全員無事に連れ帰るこ
とです。国民が納得できる制度のもと信頼を受けて派遣されてこそ、隊員は励みに感じ
、活動できるのです。
駆けつけ警護は、新たな「任務」の付与と言われますが、過去の経緯に照らせば「権
限」の付与ととらえる方が実態に近いと思います。要請があっても、隊員の安全が守れ
ないと判断すれば行かないこともありうるからです。
日本の民間人が襲われたからといって国連の指示なく勝手に助けにいくわけにはいき
ません。こうした任務は治安維持を担当する他国軍が引き受ける役割分担があります。
一方、自衛隊が国際社会から高い評価を受けているのは、道路や水道などのインフラ
整備の任務です。日の丸を背負って行く以上、南スーダンの国づくりに施設部隊の能力
を発揮し、日本の貢献を最大限アピールできる任務が割り振られるよう、UNMISS
(国連南スーダン派遣団)に積極的に働きかけました。
南スーダンの情勢は派遣当初より悪化しており、油断はできません。独立当初は南北
の対立でしたが、現在は部族間の対立が顕在化しています。PKO5原則は満たされて
いると政府が判断するのであれば、現場はその判断の下で活動するのは当然です。
だからこそ、情報収集を強化し、UNMISS司令部と連携して最大限の配慮をする
ことを政府に求めたい。ときにはためらわず活動を中止することも必要だと思います。
(聞き手・三輪さち子)

やまもとひろし 1955年生まれ、元陸将。77年陸上自衛隊に入隊、陸自富士学
校長などを経て、2012年7月退官。

===

■慎重判断、理解得る必要 岡本行夫さん(外交評論家)

冷戦時代と異なり、武力が用いられる状況や場所は拡散しています。国家に準ずる組
織やテロリスト、非正規軍、犯罪者集団など、脅威が多様化しています。みんながみん
なを守り合わなければならない時代です。
日本は集団的自衛権を一部しか認めておらず、当然ながら現在の憲法が禁じない範囲
でしか、相互の守り合いには参加できません。それでも、今回PKOに派遣される自衛
隊の任務に加わる駆けつけ警護を含め、やれることはやっていくべきです。
日本の国際協力は、よちよち歩きでした。イラク復興に派遣された自衛隊はオランダ
軍に守ってもらっていました。国際社会はそれを理解し、日本が国際協力に無理なく踏
み出せるよう、配慮してくれました。しかし外国の軍隊に守ってくれと頼むといったこ
とは、もう受け入れてはもらえないと思います。
ただし、実際の運用にあたっては、慎重さが必要です。政府は「大丈夫」と強調しま
すが、新しい任務を担う以上、リスクは増えます。警護要請があっても、応じるかどう
かは、情勢をみて慎重に判断するべきです。「派遣イコール発動」ではないことを、現
地のPKO司令部にも理解させる必要があります。
例えば、日本人が孤立していたら、少々のリスクがあっても助けに行かなければなら
ないでしょう。しかし、他の国のPKO兵士が離れたところで警護を必要としていると
いった場合は、酷な言い方かもしれませんが、優先度が低いと判断するのもやむをえな
いと思います。
先日も南スーダンで日本人専門家48人が孤立しましたが、付近にいた自衛隊は動け
ませんでした。まず日本人の警護から始め、少しずつ練度を高めていくべきでしょう。
観念的にならず、ケースを積み上げて、駆けつけ警護の体系をつくっていくべきだと思
います。
憲法にぎりぎりのところで適合しているPKO5原則から踏み出すことなく自衛隊が
何をできるかは、おのずと固まってくる。それが各国のやり方とは違っていても、理解
させないといけません。
「戦後、自衛隊は海外で1人も殺さず1人も殺されていない」とよく言われますが、
その代わりに丸腰の公務員やNGOの人、日本の船を守った外国人兵士などが殺されて
きました。そうした犠牲も忘れるべきではありません。
公務員はリスクを背負うのも任務です。自衛隊の人たちにはその覚悟があると思いま
す。一方、海外に赴く自衛隊員を、いまは家族や関係者がひっそりと見送るような状況
です。国民全体が心から敬意と感謝を持って送り出せるような合意をつくる努力を、政
府は行うべきです。
(聞き手・池田伸壹)

おかもとゆきお 1945年生まれ。68年外務省入省。北米1課長などを経て91
年退官。橋本、小泉両政権で首相補佐官。

===

■5原則、通用しない現場 伊勢崎賢治さん(東京外国語大学教授)

自衛隊のPKO参加をめぐり日本では憲法との兼ね合いで設けられた5原則、特に紛
争当事者間の停戦合意が維持されているか、が議論の中心になっています。1992年
にPKO協力法が成立し自衛隊がカンボジアに派遣されて約四半世紀がたち、国連PK
Oの役割が様変わりしたことが十分考慮されていません。
いまPKOの最も重要な任務は、紛争現場で武器を使ってでも住民を保護することで
す。きっかけは94年のルワンダの虐殺です。PKO部隊の目の前で停戦合意が決裂し
、住民同士の殺し合いになりました。しかしPKOは撤退し約100万人が死亡、国連
に対する批判が高まりました。
99年、当時のアナン国連事務総長は、任務遂行に必要ならば、PKOが「紛争の当
事者」になって「交戦」することを明確にしました。もはや停戦合意の有無は関係なく
、住民保護のためにはPKOが中立の立場を放棄することもあるし、武器使用も必要最
小限とは言えなくなりました。「交戦するPKO」の登場で、日本の5原則は意味をな
さなくなったのです。
南スーダンの自衛隊は、施設部隊です。「駆けつけ警護」が付与されても、国連司令
部が自衛隊に、歩兵部隊がやる能動的な警備任務をさせることはまずありません。まし
てや憲法9条という特殊な事情を抱えた国の部隊です。
しかし自衛隊が宿営地でじっとしていても、問題が起きます。南スーダン政府軍に追
われた住民が助けを求めたら、宿営地の門を閉めることはできない。南スーダン政府と
PKO部隊の関係は悪化しており、住民を追ってきた政府軍と交戦になるでしょう。
自衛隊員が、過って住民を撃ってしまったらどうなるのか。憲法9条は交戦権を認め
ていませんから、日本には軍人の活動を律する軍法も軍事法廷もありません。自衛隊員
の責任をどう問うのか、国際問題になるでしょう。
交戦するようになったPKOの現場に「交戦できない」自衛隊を送る。憲法とPKO
の矛盾を取り繕うことは、もはやできません。かといって自衛隊が撤退すれば、住民を
見殺しにすることになり、国際的非難は避けられません。
憲法と矛盾しない代替策が必要です。まず国連PKOへの財政支援、また非武装の軍
事監視団に自衛隊幹部を派遣したりすることも必要でしょう。警察当局は消極的ですが
文民警察も出すべきです。こうした貢献で、PKO支持を明確に打ち出すことです。
南スーダンPKO問題を、安倍政権の安保法制への賛否をめぐる政局にすべきではあ
りません。そもそも2011年に自衛隊を派遣したのは当時の民主党政権でした。与野
党党首が、自衛隊の撤退と今後の貢献策を話し合うときです。
(聞き手・桜井泉)

いせざきけんじ 1957年生まれ。国連PKO幹部などを経てアフガニスタンで武
装解除を担当。著書に「新国防論」など。

◆キーワード
<PKO参加5原則> (1)紛争当事者間で停戦合意が成立(2)日本の参加に現
地政府や紛争当事者が同意(3)中立の厳守(4)以上のいずれかが満たされなければ
撤収可能(5)武器使用は必要最小限

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

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