東京五輪・パラリンピックの会場や経費をめぐり、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、政府、組織委員会の4者協議が公開でおこなわれた。

国内の関係機関で調整がつかず、IOCが乗りだす異例の展開を経て見えたのは、相も変わらぬ日本側の一体感のなさだ。こんなことで五輪という巨大プロジェクトを本当に切り盛りできるのか。不安は拭えない。

小池百合子都知事がつくった調査チームは、経費は総額3兆円を超える可能性があると指摘していた。これに対し、組織委はきのう、「2兆円は切る見込み」と述べた。上限を明示した意義は大きい。それでもなおIOCから巨額すぎると指摘されていることを忘れず、さらなる削減を図る必要がある。

そもそも招致段階ではコンパクト五輪がセールスポイントとされていた。だが、これまでの議論でどんぶり勘定があぶり出され、別の予算費目に付け替えて見た目の数字を圧縮する手口があることも、多くの人の知るところとなった。

チケット代金やスポンサー収入などで確保できるのは5千億円程度とされ、残りは公費での負担となる。納税者の理解を得るには、ぎりぎりの精査・節減はもちろん、詳細かつ正直な説明が欠かせない。

注目された競技会場問題は、バレーボールをのぞいて決着した。「大山鳴動して」の感はあるが、観客収容人数の見直しなどによって100億円単位の圧縮が見込めることになった。

競技団体についても、豪華な施設を求めるだけでなく、五輪後の活用や運営に協力し、良き遺産を残す責務があることが、社会全体の認識となった。これらは、今回の見直し論議がもたらした成果といえるだろう。

一方で、国内組織間の信頼の醸成はまだまだのようだ。

4者協議では「すばらしい大会になるよう協力していこう」などと互いにエールを送りながら、腹の探り合いやさや当てが目についた。テレビやネット中継などでこの様子を見た人はどう思っただろうか。

大会本番まで4年を切り、課題は山積している。協議の場でも、大会経費の全体像の取りまとめをはじめとする準備の遅れが話題になった。

組織委の武藤敏郎事務総長は、関係者の連携強化や情報公開に努め、ガバナンス機能を高めていくことを表明した。今さらではあるが、こうした基本的なところから正していかなければならないのが現実だ。危機感をもって臨んでもらいたい。