(書評より)看護婦が召集されて、海外にも派遣されていたことを初めて知りました
女性が学徒勤労動員や女子挺身隊として戦争に関わったことは知っていたが、日赤の看
護婦たちが「戦時召集状」という徴兵とほぼ同様の形で召集され、場合によっては海外
で勤務させられていたことを初めて知った。本書は、その看護婦たちと戦争との関わり
について、救護活動や戦後の逃避行などを、インタビューや資料をもとに明らかにした
もの。
招集された看護婦のなかには、乳飲み子を置いて海外に送られていたケースもあること
に驚かされる。また、本来は敵味方の分け隔てなく看護するという赤十字精神があえて
捨てさられたこと、攻撃対象から外される赤十字標章を軍が利用し、それゆえに赤十字
関連の施設や船舶が攻撃されていこと、前線では衛生材料が不足・欠乏するなかでの看
護も強いられていたことなどにも触れられている。さらに、戦後、兵士たちには軍人恩
給があったのに比べ、従軍看護婦に恩給に比べると僅かとはいえ「慰労金」が支給され
るようなったのが、1970年代後半以降という補償面での差別も指摘されている。
第9章「日赤看護婦、性暴力被害と精神障害の現実」では、敗戦後に大陸にいた看護婦
たちがソ連兵などから暴行を受けただけでなく、日本兵からもセクハラを受けるケース
さえあったこと、兵士だけでなく従軍看護婦にも精神障害があったことも明らかにされ
ている。
本来の「赤十字精神」は正しいものなのであろうが、戦争はそれを容易く踏みにじって
いる。だからこそ、「エピローグ」で元救護看護婦たちが語るように「戦争は二度とし
てはいけない」のだろう。
「戦争と看護婦」
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