国内最大の米軍専用施設、沖縄県の北部訓練場の半分にあたる約4千ヘクタールがきのう、日本側に返還された。

日米合意から20年越しの懸案である。返還がようやく実現したこと自体は評価したい。

残念なのは、せっかくの返還がかえって、県民と政府の溝を深めてしまったことだ。

最大の原因は、沖縄の民意より、米軍の要求を優先する日本政府の姿勢にある。

返還条件とされた東村高江周辺でのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事に、全国の機動隊を投入。抗議行動を続けた人々にけが人が相次いだ。

そもそも政府は新パッドをオスプレイが使うことを隠し続けていた。前提が変わったとして県が求めた環境影響評価のやり直しも拒んだ。工事を急ぐために工法を変更し、それに県が異を唱えても耳を貸さない――。

こうしたふるまいが、いったんは返還に歓迎の意を示した県の不信感を強めた。

そんななかで起きた名護市でのオスプレイの事故。米軍による飛行再開を、事故機の回収すら終わっていないわずか6日後に政府が認めたことも、県民の怒りを増幅させている。

翁長知事はきのう、名護市であった政府主催の返還式典には出席しなかった。

一方で、同じ名護市で市民4200人(主催者発表)が参加した、オスプレイの撤去を求める集会で壇上に立ち、「県民に寄り添う姿勢が見られない」と政府の対応を批判した。

今回の返還後、全国の米軍専用施設の面積のうち沖縄県に集中する割合は74・5%から70・6%に減る。

政府は「負担軽減」を強調するが、逆に基地機能の強化につながるのではないか。沖縄ではそんな不安が広がっている。

北部訓練場にヘリパッドが完成する一方、名護市に近い伊江島補助飛行場では最新鋭のステルス戦闘機やオスプレイが利用するための拡張工事も進む。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設が実現すれば、この3カ所を拠点に、県北部の米軍基地機能は格段に増強される。

辺野古移設計画をめぐる訴訟で、最高裁は県側の主張を退けた。だが政府が強引に工事再開に突き進めば、県民の不信を高めるだけだ。

そうなれば移設そのものにも、在沖米軍基地全体の運用にも、支障をきたすだろう。

民意を踏まえた丁寧な対話でしか、互いの信頼は取り戻せない。その原点に、政府は立ち返るべきだ。