「米国は核不使用宣言を」 秋葉前広島市長がトランプ氏に手紙

広島平和記念公園に立つ秋葉忠利さん

 米国の新大統領に20日、ドナルド・トランプ氏(70)が就任する。オバマ大統領が種をまいた米国の「核なき世界」に向けた政策はどう変わってゆくのだろうか。就任に当たって、長年にわたり反核運動に取り組んできた前広島市長の秋葉忠利氏(74)が、広島の思いを伝えようと新大統領に宛てて手紙を送った。【森忠彦】


 ◆北東アジアを非核地帯に

拝啓 トランプ新大統領殿

秋葉さんが送ったドナルド・トランプ氏宛ての手紙

 前広島市長として、大統領選での歴史的勝利ならびに新大統領ご就任にお祝いを申し上げます。

 核兵器についての今後の貴殿の決定が世界中の人々、特に広島市民と被爆者にとっては大きな関心事であり、貴殿の決定が、賢明かつ平和的なものであることを期待しています。

 貴殿は選挙期間中、「北朝鮮と話し合ってもいい」との意向を示されました。近年の大統領とは違う勇気を示しています。さらに「米国はもはや世界の警察官としての役割は果たさない」とも言われました。つまり、米国の世界における力は維持するものの、国際問題を解決するには、まず外交的な手段から始めるという方針だと受け止めています。日本と韓国が自前の核兵器を持つことは奨励しないとも表明されました。

 次なる関心事は貴殿が実際に北朝鮮に会った際に何を言われるのかということです。ぜひ核兵器を廃棄するよう説得してください。日本と韓国が核武装しないことは、北朝鮮がその提案を受け入れる大前提になります。

 そのうえで、北朝鮮が核兵器廃棄に合意するためには北朝鮮にとってのさらなる「利益」が必要でしょう。それは北朝鮮に対して「米国が核兵器を使わない」という保証ではないでしょうか。

 理由は明快です。現実問題として米国が日本や韓国に核攻撃をすることはあり得ません。人類の滅亡につながる危険を冒して、米国が中国やロシアに対して核兵器を使用する可能性も少ないでしょう。そのような状況下で、この地域で唯一北朝鮮だけを例外扱いする意味はあるのでしょうか。北朝鮮が米本土にまで届く核ミサイルの開発をやめれば、米国にとっての直接の脅威はなくなります。一方で米国が警察官をやめれば、北朝鮮の核攻撃もなくなり、核兵器を使う必要がなくなるのです。

 北朝鮮が誰の核からも安全になったとすると、日本や韓国も同じように安全であることでバランスをとることが必要になります。中国は核兵器の先制使用はしないと宣言していますので、問題はロシアです。ぜひプーチン大統領との会談では日韓には核兵器を使わないという合意をしてください。

 こうした合意ができたとすると、北東アジアに関係する6カ国のうち、真ん中の日本と韓国、北朝鮮は核兵器を持たない。そして外側の3カ国、つまり米国、ロシアそして中国は3カ国に対しては核兵器を使わないと約束するということになります。このシナリオは貴殿の発言とは矛盾しません。また、最近の米国大統領の中でこのような新機軸を実現できるのは貴殿だけです。これが実現すれば、貴殿は「北東アジア非核地帯」を創造したことになり、全世界から称賛の声が上がります。もはや米軍が常駐して警備にあたる必要はなく、警察官としての役割も減少します。世界の国々は、他の地域においても同様の偉大な成果を上げることを期待するでしょう。

 最後に、広島あるいは長崎を訪問してくださるよう招請致します。貴殿であれば被爆者と心の通う関係を築くことは可能です。時間が問題なら、まず米国に在住している被爆者と会ってください。彼らの多くは米国籍の日系アメリカ市民で、原爆投下時、たまたま広島の学校に通っていて被爆した人たちです。オバマ大統領は広島でのスピーチで日系アメリカ人被爆者の存在には触れませんでしたが、彼らの被爆体験は一聴の価値があり、そのメッセージは全ての人に希望をもたらします。彼らと向き合うことは、戦争、そして人類の生存についての貴殿の考え方を変えるほどのインパクトがあると確信しています。

 前広島市長 秋葉忠利

       ◇

 和訳要約。英語の全文は毎日新聞社の英文ニュースサイト「The Mainichi(http://mainichi.jp/english)」に掲載します。


「核なき世界」へ夢つなげたい

 1942年生まれの秋葉氏の人生は、戦後の反核運動の一縮図と言っていいだろう。小学生の時に映画「原爆の子」を見たのが生涯をかけて広島、原爆とかかわるきっかけとなった。高校時代に米国に留学中、現地では日米開戦の契機となった日本軍による真珠湾攻撃と絡め、「原爆投下は正しかった」「リメンバー・パールハーバー」と教育されていることを知る。反論しても多勢に無勢。まずは被爆地の実態を伝えようと、米タフツ大学勤務時代に米国の地方紙記者を広島・長崎へ派遣する「アキバ・プロジェクト」を始めた。

 その後、広島修道大教授を経て衆院議員(3期)、99~2011年に広島市長3期を務め、8月6日の「平和宣言」はすべて自分の言葉で世界に発信してきた。09年に「核なき世界」を唱えたオバマ大統領に感動し、翌年訪れたホワイトハウスでは広島への訪問を直接、要請したこともある。昨年5月の広島訪問は「これで米国社会が変わる。世界は確実に平和の方向に変化してゆく」と期待したという。

 しかし、広島訪問で弾みがついたかに見えた平和に向けた勢いは、米国内外の逆風を受け、失速しつつある。

 オバマ氏が目指した米国の核先制不使用宣言は政権末期の昨年秋、米議会の反発などを受け挫折した。核兵器禁止条約制定に向けて今年3月から交渉を開始することを定めた国連決議案は、昨年12月末の国連総会で113カ国が賛成し採択されたが、核保有国である米英仏やロシアは反対。中国は棄権に回った。核兵器廃止に向けた国際的な環境は、相変わらず厳しい。

 この手紙には、「オバマ氏広島訪問で高まった世界の期待を、夢を壊さないでほしい」という秋葉氏の願いが込められている。手紙は今月中旬、ホワイトハウスと在日米国大使館宛てに2通郵送された。

 トランプ新大統領に、広島の思いはどう響くだろうか。

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