永岡です、今朝もSESSION22の内容をお知らせいたしましたが、東京MXテレビで放映されたニュース女子なる番組の沖縄ヘイト内容について、誹謗中傷された辛淑玉さん、支援されている李信恵さんの見解をお送りいたします。
辛淑玉さんの、沖縄タイムスの記事、
東京MXテレビの番組「ニュース女子」に対する辛淑玉(シンスゴ)さんの見解は次の通り。
1月2日に放送されたTOKYO MX「ニュース女子」は、とにかくひどかった。
見ていて、こみ上げる怒りを抑えるのがこれほど難しかった経験はかつてなかった。胃液があがってきて、何度も吐いた。その後も、何げない会話の中で突然涙が出てきたり、幾日も眠れぬ夜を過ごし、やっと眠れたと思えば悪夢にうなされた。
私が、この番組の放つ悪意に冷静に向き合えるようになるまでには、時間が必要だった。友人や報道陣からの問い合わせに簡単な返信すらできなかったことを、この場を借りておわびしたい。
いま、可能な限り、私の思いを言葉にしてつづりたいと思う。
「ニュース女子」の手口は、基地反対運動について、徹底的にニセの情報を流すというものだ。
現場にも行かず、当事者にも取材をしない一方で、反基地運動によって迷惑をこうむっているというニセの「被害者」を登場させる。そして、「沖縄の反基地運動はシンスゴという親北派の韓国人が操っている。参加者はカネで雇われたバイトで、その過激な行動で地元の沖縄人は迷惑している」というデマを流して視聴者の意識を操作する。
これは、沖縄の人々の思いを無視し、踏みにじる差別であり、許しがたい歪曲(わいきょく)報道である。また、権力になびく一部のウチナンチュを差別扇動の道具に利用して恥じない「植民者の手法」でもある。
多くの報道で、「ニュース女子」が取材もせずに番組を作ったことが指摘されていたが、彼らは取材能力がないためにネトウヨ情報を検証もせずに垂れ流してしまったのではない。この番組は、「まつろわぬ者ども」を社会から抹殺するために、悪意をもって作られ、確信犯的に放送されたのだ。
だから、間違いを指摘されても制作会社はコメントを拒否し、MXテレビは「議論の一環として」放送したと開き直っただけだった。公共の電波を使った放送を担う企業としての体をなしていない。
為政者にとって、自分になびかない者の存在は、自らの優越性を否定されるため最も憎い存在であり、だから国家体制を批判する者には「非国民」のレッテルを貼り、他の国民が寄ってたかって攻撃するよう仕向ける。その手先としてメディアを使う。そこにあるのは「愚かな国民など、この程度のことを吹聴しておけば簡単にだませる」という国民蔑視だ。
国家権力の素顔を見抜き、闘いを挑んでくる「生意気な非国民ども」に対しては、ただつぶすだけでは飽き足らず、嘲笑して力の差を見せつけた上で、屈辱感を味わわせようとする。「ニュース女子」が、年始特番の、しかも冒頭で私を名指しして嘲笑したのは、私が怒って抗議してくると想定した上でのことだろう。感情的になって抗議してくればそれを笑い飛ばす、抗議してこなければ、「抗議してこないのは、報道内容が正しかったからだ」と宣伝材料に利用できる。どっちにころんでもおいしいというわけだ。
私も、沖縄の人々も、平和を希求する者は、一方的に攻撃されているのに、それが被害であること、ヘイト・スピーチであることを、被害者の側が実証しなければならないという理不尽な立場に立たされる。私は、毎日仕事をしながら、家族の介護をしながら、シェルターを運営しながら、怒りを抑えて問題を冷静に見つめ、膨大な時間を費やしてBPOに提出する文書を書かねばならない。
その必要がなければできたはずの、睡眠時間や、家族・友人との大切な時間、幸せ、楽しみといった人生本来の意味をも、一方的に奪われている。相手を嫌でも闘わざるを得ない立場に追い込み、休息する権利、声を上げる権利を奪うのは、それ自体が人権侵害なのだ。そしてこれは私だけのことではなく、沖縄の人々が置かれている状況も同じだ。
私はなぜ、在日への差別だけでなく、さまざまな差別に声を上げるのだろうか…。
時に、自分でも不思議に感じる時がある。お金も、時間も、体力も、あらゆるものを犠牲にして、どうしてここまでやるのかと。もっと楽な生き方ができたはずなのにと言われたことも、一度や二度ではない。
確かなのは、被差別の歴史に共感する胸の痛みがあるということだ。
歴史や文化は異なっているが、ウチナンチュも在日朝鮮人も、日本の国家体制によって植民地支配を受け、人間としての権利を保障されず、排除・差別されてきた。
ウチナンチュは日本国籍を付与された一方で島ごと奪われ、沖縄戦では「国体」や本土の日本人を守るための捨て石にされた。敗戦後は膨大な米軍基地を押し付けられ、いまも命・生活・人間の尊厳など多くを奪われ、抑圧されている。
朝鮮人は、頼んでもいないのに帝国臣民にされ、日本兵の下請け・弾よけとして最も危険できつい労役につかされた揚げ句、敗戦後は日本国籍を一方的に剥奪され、国籍がないことを理由に戦後補償の対象から外され、「外国人」として排除、差別を受けてきた。
経緯に違いはあっても、植民地支配の対象とされてきた点では同じ位置に立たされている。
そして、私は「殺せ」と言われ、沖縄の友人たちは「ゴキブリ」「ドブネズミ」「売国奴」「土人」と言われ、まとめて「反日・非国民」とくくられている。沖縄で起きていることは、私にとって他人事ではないのだ。
彼らの痛みは私の痛みでもある。在日としてこの国に生を受けた以上、見て見ぬふりは許されないと私は思っている。
「どんな発言にも表現の自由はある」と「中立公平」を装い、サイレント・マジョリティーの位置を確保して高みの見物(これこそが特権である)をする人々の沈黙によって、「在日」も「オキナワ」も、孤立無援の状態で表現の自由を奪われている。
差別と闘う責任は、被差別の側ではなく、差別構造を作り出し温存する側にこそある。この国の主権者は、自らの社会から差別をなくすために払う努力を、主権を奪われたままの在日に押し付けてはならない。同様に、沖縄に押し付けてもいけない。
新しい基地をつくらせないという闘いは、ヤマトンチュ自らが政治の中枢部でなすべきであり、そうしなければ根本的な解決には至らない。
いまこそ、マジョリティーが矢面に立って闘わなければ構造は変わらない。自分に火の粉が降りかからない限り動かない者が多数派の社会に、未来はないのだ。
デマを流し、政権の先兵として憎悪扇動を行うこの番組を、決して許してはならない。あらためて、それだけは言っておきたい。
李信恵さんのLOVE PIECE CLUBの内容、
http://www.lovepiececlub.com/news/mobile/rishine/2017/01/28/entry_006483.html
1月2日に放送されたTOKYO MXの「ニュース女子」91。この日は「沖縄・高江のヘリパット問題はどうなった? 過激な反対派の実情を井上和彦が現地取材!」と題した沖縄・高江の報告がなされた。ひとことで言えば、デマばっかり。最初に観た時は、絶句した。そして残ったのは怒りしかなかった。原稿を書くのに再度視聴したが、今度はすごく辛く、悲しくなって涙がこぼれそうになった。自分が受けたヘイトスピーチと重なって、フラッシュバックを起こした。
沖縄県東村高江では、米軍のヘリパッド建設に反対する市民が抗議行動を行っている。私も沖縄には昨年の9月と12月に訪れた。9月は台風の影響もあったため、名護まで。12月には高江での抗議集会に参加した。車がなければ不便ではあるけど、現地の友人の車に同乗させてもらって現地まで何事もなく行けた。
集会が開催される前には参加者の歌などもあり、とても和やかなものだった。運動は怒りだけでは続かないものだから、そう云った笑いも取り入れることってとても大切だ。集会では女性議員が「私たちは戦後70年間、沖縄でずっと闘ってきた。2か月、3か月の話ではない」というスピーチをした。その言葉が、胸に刺さった。沖縄の市民がヘリパット建設に反対するのは、自分たちの尊厳が踏みにじられているからだ。戦後70年、ずっとだ。沖縄も、在日も。マイノリティの中では、戦争はまだ終わってないと思う。
12月に沖縄に行くすこし前に、たまたま辛淑玉オンニ(朝鮮語でお姉さんの意味)と電話で話した。のりこえネットが沖縄の高江へ市民特派員を派遣しており、交通費として5万円を支給するという告知を見ていたこともあって、「のりこえネットの市民特派員、フリーライターじゃだめ?」と尋ねた。書くことを職業にしているから、プロでも市民特派員になれるのかなと思ったからだ。淑玉オンニは「どうだろう。一度のりこえネットに問い合わせてみたら?」と返事があった。なので、市民特派員に応募した。フリーランスなので、取材は交通費との闘いでもある。いつもこの戦いには負けている。
結果は無事に合格で、2泊3日で沖縄に滞在した。大阪からで、さらにLCCを利用。初日は名護のゲストハウス、翌日は沖縄の友人宅に泊めて貰ったので若干安く行けたとはいえ、名護から那覇まで長距離バスにも乗ったし、食費もかかる。
しかし「ニュース女子」は、「反対派は日当を貰っている!?」「反対派を扇動する黒幕の正体は!?」として、外国人である辛淑玉がお金を集めて、日当を払って運動員を沖縄に送り込んでいる、と報道した。嘘ばっかり。私はまた2月上旬にも沖縄に再度行く予定なので、交通費だけですでに5万円以上。日当どころではなく大赤字だ。
沖縄のことはこれまで内地ではほとんど報道されてこなかった。だから「のりこえネット」は2016年11月に沖縄の状況を報告する市民特派員を募った。また、市民特派員を応援するために募金を呼びかけた。結果的に17人がのりこえネットに集められた市民からのお金で沖縄に行った。私もその内の一人だ。
反差別、反ヘイトスピーチの活動に参加してきた人たちは、いち早く沖縄の問題にも目を向けた。そして、沖縄へと向かった。それは、沖縄で起こっていることもまた差別であり、この日本の社会で立ち向かわなければいけない自分自身の問題であると感じたからだ。「ニュース女子」は、そんな普通の市民の思いも踏みにじった。
番組の説明は「タテマエや綺麗ごとは一切なし!本音だらけのニュースショー!!今話題のニュースを女性とともに考え、面白くわかりやすく解説する、大人の社交界型ニューストーク番組」とあった。
権力には露骨に媚びるのに、沖縄で声を上げて戦う名もなき人たちのことはまともに検証もせず、あざ笑う。本当にひどい番組だ。「今話題のニュースを女性とともに考え」とあるが、「どこが?」と思う。お飾りのように若い女性を並べ、この国のマジョリティの象徴ともいえる日本人の男性たちが、彼女らに教えるというような構成だ。対等には到底見えなかった。黙ってうなずく、自分の話を尊敬のまなざしとともに聞いてくれる女性の方が、都合がいいからだろうな。
これと同じような番組を、自分はどこかでずっと前から見たことがある。それは、「(たかじんの)そこまで言って委員会」だ。この番組も「ニュース女子」と同じく、権力と対峙するという報道のあるべき姿を忘れ、右傾化する日本社会をそのまま体現し、ヘイトスピーチに近い(ほぼヘイトスピーチといってもいいかも)言説を垂れ流す番組だ。大阪府警が沖縄で「土人」発言をした背景には、こういう番組を垂れ流すという土壌が大阪にあったからではないのかとも思う。
そして、私が怖いのは、これらの番組の内容自体はもちろんだけど、その主張にうなずく視聴者がこの社会には多く存在するということだ。その姿は見えないからこそ、不安になる。
1月16日、MXテレビ側が見解を発表した。「1月2日に放送しました沖縄リポートは、様々な沖縄基地問題をめぐる議論の一環として放送致しました。今後とも、様々な立場の意見を公平・公正にとりあげてまいります」
デマや偏見を垂れ流すこと、沖縄や在日の差別を煽ることは議論じゃない。弱者の側に立つこと、名もなき人の声を拾い上げるのが報道の役割だ。権力の公報になり下がっているメディアは、いつか自分で自分の首を絞めることになる。
同番組でヘイトスピーチを受けた、のりこえねっとの共同代表の淑玉オンニは1月27日、BPO放送人権委員会に人権を侵害されたとして救済を申し立てた。1月22日、淑玉オンニは自身のFacebookで、今回の件についての投稿をした。
読んでいて、辛くて涙が出た。淑玉オンニの魂の叫びのようで、嗚咽のようにも感じた。踏みにじられたのは、オンニだけじゃない。私も心を殺された。在日であること、そして女性であるからこそ、そして声を上げるからこんな被害に遭う。「ニュース女子」は、ひどい発言をした男性をたしなめることも批判することもなく、笑っている若い女性たちがいた。「なぜ韓国人が沖縄に?」眉をひそめながら、ヘイトスピーチに加担する彼女たち。今そこで自分たちの尊厳も踏みにじられていることが、これっぽっちも分かっていないように見えた。
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