大阪市の学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、安倍晋三首相の妻昭恵氏の言動が国会で大きな論点になっている。「家庭内野党」を自任する発言で話題になったこともある昭恵氏。国内外の要人と会い、世間の注目を浴びることも多い首相夫人(ファーストレディー)は、私人と言い切れるのか。

「妻は私人なんです。まるで犯罪者扱いするのは不愉快ですよ」

安倍首相は1日、参院予算委員会でこう発言した。森友学園が開校予定の小学校の名誉校長になっていた昭恵氏について、共産党の小池晃氏に学園理事長との詳しい関係を質問されての反論だった。2日の同委員会でも自由党山本太郎氏の質問に「確かに妻は総理夫人というふうに呼ばれる」としつつ「公人ではない」と答弁した。

野党側は学園が運営する幼稚園の教育方針も問題視。昭恵氏が講演や小学校のホームページで学園の教育方針を称賛していたなどとして「総理夫妻の政治的、道義的責任は免れない」と追及している。

海外メディアの関心も高く「安倍晋三と妻が、超国家主義の学校との関係を巡り追い詰められている」(英紙ガーディアン)、「日本のファーストレディー、学校の名誉職を辞任」(米紙ワシントン・ポスト)などと報道。この問題を巡る民進党の会見には、米英や中国のメディアも参加した。

首相夫人は、政府内でどう位置づけられるのか。

ログイン前の続き内閣府によると、第1次安倍政権の2006年に昭恵氏をサポートする「首相公邸連絡調整官」が設けられた。土生栄二内閣審議官は2日の国会で、06年以降は民主党政権時代も含めて非常勤1人で推移し、現在は外務、経済産業両省の職員計5人が昭恵氏の外遊や会議出席をサポートしていると説明。私的な行為には「関与しないというふうに承知している」とした。

外遊や災害地訪問などの際には、国家公務員旅費法に基づく手当が支払われる。財務省によると、ニューヨーク、パリへの外遊は日当9400円、宿泊料2万9千円となっている。

土生氏によると、第1次と第2次安倍政権で昭恵氏に支払った交通費などの総額は約145万円で、第2次以降は日当は辞退しているという。サポートする職員について首相は「安倍政権になって海外出張が格段に増えている」「常駐は2人で、あとの3名はいわば臨時」と説明した。

首相夫人の言動批判、過去にも

昭恵氏は12年の首相の再登板前後から、表に出る機会が増えた。首相の地元・山口で稲作をはじめ、都内に居酒屋をオープン。フェイスブックや動画サイトでも発信し、原発や防潮堤をめぐって政策に異論も唱えた。自著『「私」を生きる』では「頭から『主人の言うことは正しい』と信じるのではなく、耳の痛いことも含めて、(首相に)いろいろな国民の声に耳を傾けてもらうことが、総理夫人としての私の役割」と記している。

首相夫人の言動が批判されたことは、過去にもある。鳩山由紀夫元首相の妻幸(みゆき)さんは10年、公邸に韓流スターを招いて手料理を振る舞ったことが国会で「経済状況も厳しい中、庶民感覚がずれている」ととがめられた。

歴代首相夫人について著書がある政治評論家の小林吉弥さんによると、首相夫人は行動派と表に出ない人に分かれる。「昭恵氏は活発なタイプ。外遊の際などにはっきりものが言えるのは外交的によいことで、時代にもあっている」としつつ「基本的に私人だと思うが、影響力が非常に大きく、名前を利用して箔(はく)をつけたがる人も多い。歴代の夫人は皆、そうした誘いには慎重だった」と話す。

「安倍三代」の著者で昭恵氏にインタビューしたこともあるジャーナリストの青木理さんは「沖縄・高江のヘリパッド反対運動の現場を訪ねる一方で、森友学園の小学校で名誉校長になる。良く言えば天衣無縫だが、悪く言えば無節操。教育基本法を逸脱しているとも指摘される学園の名誉校長就任は、あまりに慎重さが欠けている」と指摘。「首相夫人は法的には公人でなくとも、限りなく公人に近い節度が求められる立場だ」とみる。

憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「首相夫人は要人との会食など公的な行為をすることがあり、公職の一種」ととらえる。「名誉校長の就任が完全にプライベートな行為と説明する余地はあるが、『内閣総理大臣夫人』という肩書を使われている以上、公務とみる人がいてもやむを得ない。仮に私的行為でも、昭恵氏自らが国会や記者会見で説明する責任はあるだろう」と話した。(坂本進、高浜行人、田玉恵美)

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コメント:首相夫人・ファーストレデイなどの言葉・認識があれば公人。公費・公事が関係すれば公人。一人の人間で公私分離できないから公私疑義のある時は私人として言い訳することは出来ず、その事を承知して行動すべきだ。