Global Ethics


『自由貿易は私たちを幸せにするのか?』    by limitlesslife
March 13, 2017, 9:56 am
Filed under: TPP
(書評)『自由貿易は私たちを幸せにするのか?』
上村雄彦、首藤信彦、内田聖子ほか〈著〉
朝日新聞 2017年3月12日

『自由貿易は私たちを幸せにするのか?』
■多国籍企業だけ利するTPP

政府は、TPPが貿易自由化により国民に成長と雇用増加をもたらすと喧伝(けんで
ん)してきた。負の影響は農業に限定されるとし、どう保護/開放すべきかにもっぱら
焦点が当てられてきた。

しかし実のところ、農業をはじめとする「モノの貿易」は、TPP協定のほんの一部
にすぎない。本書は、全編を通じてTPPの本質が、多国籍企業の投資自由化にあると
鋭く指摘する。多国籍企業の投資を妨げる障壁、それは貿易相手国の税制であり、国民
の健康、安全、環境を守る規制であり、あるいは独自のビジネス慣行だったりする。こ
れらを除去し、多国籍企業の収益最大化への道を敷き詰めることこそ、TPPの最大の
眼目である。

多国籍企業の権益はTPPを通じて強化される。経済の主戦場は、すでにモノからサ
ービスへ、さらには知的財産などの無形資産に移行している。例えば、医薬品に関する
知的所有権保護の強化で多国籍企業の収益は底上げされる一方、それによるコスト増加
は、国民の医療費に転嫁される。極めつきは、「ISDS(国家と投資家の間の紛争解
決)条項」だ。これは、自国民の健康・安全、あるいは環境保護のため多国籍企業を規
制した場合、彼らが「損失を被った」として当該国政府を訴えられる制度だ。本書は、
日本ではほとんど報道されてこなかったTPPのこうした本質に、私たちの目を向けさ
せてくれる。

本書が採用するタフツ大学経済モデルの示す試算結果は、衝撃的だ。日米両国とも、
TPPによってマイナス成長、雇用減、そして労働分配率の低下が生じるというのだ。
これは、「TPPは多国籍企業のためであって国民のためにならない」と警告する米国
のノーベル経済学者スティグリッツ氏の主張とも筋道が合う。TPPは経済好影響どこ
ろか、負の影響をもたらすのだ。我々は少なくとも、こうした論点を知悉(ちしつ)し
た上でTPPを論じるべきではないだろうか。

評・諸富徹(京都大学教授・経済学)

『自由貿易は私たちを幸せにするのか?』 上村雄彦、首藤信彦、内田聖子ほか〈著
〉 コモンズ 1620円

うえむら・たけひこ 国際政治学者/すとう・のぶひこ 同/うちだ・しょうこ N
PO法人PARC共同代表

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12837626.html?rm=150

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

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