3月23日、学校法人森友学園への国有地払い下げ問題に関連して、渦中の人物である森友学園の籠池泰典理事長の証人喚問がおこなわれた。この問題が発覚して以来、安倍政権の支持率は下がり続ける一方で、与党内部からは、先行きを危惧する声も上がり始めている。長期安定政権に見えた安倍政権を揺さぶり続ける森友学園問題の背景と、証人喚問が今後、安倍政権に与える影響について、ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。(取材・文/清談社)

安倍総理の権力濫用
証人喚問を決めたトンデモ背景

問題発覚以降、自民党は一貫して野党が要求する籠池理事長の証人喚問にゴーサインを出さなかった。その風向きが変わったのは、3月16日に行われた参議院の予算委員会の理事たちの現地視察だ。その場で籠池理事長が「安倍総理からの100万円の寄付」の存在を明言したのである。

籠池氏の「100万円寄附」発言に激怒し、強引に証人喚問に踏み切った安倍政権。しかし、結果は完全に裏目に出て、幕引きを図るどころか、新たな疑問が次々に出てきただけ。泥沼化の様相を呈してきた森友学園問題は、安倍政権にとって“蟻の一穴”になるかも知れない Photo:Natsuki Sakai/AFLO

「自民党はそれまでは『民間人を安易に国会に呼ぶのはいかがなものか』と理屈をつけて、籠池理事長の招致に徹底して反対していました。もちろんそれは建て前で、本音は国会に呼んであることないことを理事長にしゃべられたらどうなるか分からない、口利き議員の名前がさらに出される可能性を恐れて反対していたわけです。ところが、安倍総理からの寄付について言及されると、すぐに参考人よりも重い証人喚問を行うことを決めたわけです」(鈴木氏)

参考人招致に比べ、証人喚問は、嘘の証言をしたことが明らかになった場合、偽証罪に問われる。証言者の責任もより重くなる。なぜ自民党は、証人喚問を求めたのか。

「自民党の予算委員会のメンバーから聞いた話ですが、籠池理事長の発言に安倍総理が激怒して証人喚問の実施を決めたそうです。しかし、これはおかしな話です。これまで散々『民間人だから』という理由で拒否していたのに、安倍総理の名誉を損なう発言をしたというだけで一転、証人喚問をするというのですから。これでは政権に批判的な人間を証人喚問して圧力を掛けようとしているとの批判が出るのも当たり前でしょう。権力の濫用と言われても仕方ありません」(鈴木氏)

財務省の関与を伺わせる
FAXを暴露した籠池理事長

まるでどこかの独裁国家と変わらないようなやり方である。だが23日の証人喚問では、森友学園問題に早期に幕引きをしようという自民党の思惑は果たされなかった。

籠池理事長は、堂々とした態度で証人喚問に臨み、安倍総理からの寄付や他の政治家の名前などを具体的に証言し、それだけでなく安倍昭恵総理夫人付職員からのFAXの存在まで明らかした(のちに菅義偉官房長官が、FAXは実物であると発表している)。

野党は、安倍昭恵総理夫人や松井一郎大阪府知事の国会招致を求め、問題はさらに拡大の様相を見せている。

「今回の籠池理事長の証言により、昭恵夫人との発言の食い違いが公の場で明らかになりました。嘘を言えば偽証罪に問われる証人喚問の場でなされた発言は重い。また、総理夫人付職員からのFAXも、財務省の関与をうかがわせるものです。結果的に自民党は証人喚問で、籠池理事長の発言の信憑性を貶めるのではなく、新たにいろいろな疑問へと広げる形になってしまいました。籠池理事長ひとりの証人喚問だけでこの問題にケリをつけたいという思惑は、完全に裏目に出たかたちです」

証人喚問の翌日の24日、国会は払い下げの交渉当時の理財局長である迫田英典国税局長官と元近畿財務局長の武内良樹財務省国際局長の参考人招致を行うなど、自民党は早くもさまざまな動きを見せている。今後、この問題はどのような様相を見せるのだろうか。

「自民党は問題の鎮静化を急ぎたいでしょうが、世論がそれを許すかどうかです。財務省や大阪府の担当者は『記録がない』の一点張りで、具体的なやり取りをいまだに明らかにしていません。何一つ真相は解明されず、疑惑は深まるばかりです。寄付自体は違法ではないとはいえ、安倍総理自身が国会で『私や妻は一切関わっていない。もし関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任するということを、はっきり申し上げる』とまで断言しているわけですから、野党も追及の手を緩めることはないでしょう」(鈴木氏)

証人喚問で開いたパンドラの箱
安倍政権の行方は世論とメディア次第

安倍政権は、森友学園問題のほかにも、危うい答弁を繰り返す稲田朋美防衛大臣の資質問題や、南スーダンの自衛隊の日報問題、「共謀罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正案など難題を抱えている。また、6月には小池百合子東京都知事と対決する東京都議会議員選挙も控えている。今後の政界の動向は、政局含みで展開するのは間違いないだろう。

「森友学園問題が泥沼化することによって、安倍内閣の国会戦略が行き詰まりを見せていく可能性はあります。安倍内閣の支持率にもさらに影響を与えるでしょう。結局、今回の証人喚問はパンドラの箱を開けてしまったようなもので、官邸や自民党はとにかくこれで終わりにしたいのでしょうが、一方でどこまで問題が波及するのか見当がつかないと本音を漏らす人もいます」

「これまでのリスクマネジメントが奏功しているとはまだ言えないでしょう。予算の成立に合わせて、予算委員会という議論の場を閉じることはできますが、あまり強引に推し進めれば、それこそ『森友学園問題隠しだ』と世論に受け止められ、さらに支持率が下がる可能性もあります。今後はメディアがどこまで真相に迫れるのか、そして世論がこの問題に対して、どこまで高い関心を持ち続けるのかがカギを握るでしょう。森友学園問題が長期安定政権のように見えた安倍政権を揺さぶる“蟻の一穴”になる可能性はあります」(鈴木氏)

果たして、森本学園問題は安倍政権の「終わりの始まり」になるのだろうか。まだまだ森友学園問題の展開は予断を許さない。