学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐり、国政調査権のさらなる発動が国会の焦点となっている。自民党が学園の籠池(かごいけ)泰典氏の証言の「偽証」を立証する手段として発動に言及。それならばと民進党も応じる構えを見せた。ただ、その目的は、安倍晋三首相の妻昭恵氏と学園の関係の追及や国有地売却に関する事実の解明だ。

国政調査権で真相解明をすることは大賛成だ」

民進の山井和則国会対策委員長は30日の記者会見で、自民内で検討されている国政調査権のさらなる発動に賛同し、昭恵氏の証人喚問財務省国土交通省の資料開示にその権限を使うべきだと主張した。

国政調査権憲法で保障された国会の権限だ。偽証罪も問える証人喚問のほか、衆参いずれかの委員会で過半数の議決を経れば、内閣や官公庁などに報告や記録の提出を要求できる。2010年には中国漁船衝突ビデオを提出させた。

ログイン前の続き民進の念頭にあるのは、学園が開設を計画していた小学校の名誉校長を15年9月から先月まで務めた昭恵氏と籠池氏の関係や、国有地の値引きなど異例ずくめの売却手続きとそれに対する昭恵氏の影響の解明だ。

山井氏は、籠池氏の「偽証」を証明しようと自民の西村康稔総裁特別補佐らが28日に「国政調査権の発動も視野に入れる」と話したことを「誰かを懲らしめる意味で(権限を)使おうというのは違う」と批判。

一方で「真相究明に役立つ国政調査権の行使をあす提案したい」と自民の動きを逆手に取り、共産、自由、社民の野党3党と連携のうえ、31日の衆院予算委員会の理事懇談会で発動を逆提案する考えだ。

■自民、証言の「虚偽」立証狙う

そもそも自民は籠池氏の参考人招致にすら消極的だったが、「首相側からの100万円の寄付」発言が籠池氏から出たとたん、「首相への侮辱」といって一転、証人喚問に踏み切った。国政調査権のさらなる発動を視野に、党として調査を進める西村氏も「(問題は)総理と夫人の名誉にも関わることだ」と語る。

自民が狙うのは、籠池氏の証言に「虚偽」があることを証明することで、昭恵氏との関係などに関する証言全体の信頼性を問うことだ。

たとえば、昭恵氏からの寄付金という100万円を郵便局で振り込んだときに受け取った受領証に関する籠池氏の証言。「(妻ではなく)我々の職員が書いた」という記載を党と政府それぞれで筆跡鑑定し、筆跡は籠池氏の妻のものとの見方を強めている。

確定すれば証言と矛盾することになることから、国政調査権を発動して「日本郵便が保有する払込票の原本、払込人(籠池氏側)が保有する受領証の原本を徴収し、正式な筆跡鑑定をすべきだ」(西村氏)と主張する。

安倍晋三記念小学校」と書かれた寄付金の払い込み取扱票について、「(使用は)ほんの一瞬。お断りいただいた段階ですぐに焼却した」とした証言も虚偽の可能性があるとして、取扱票の使用期間などを調べる考えだ。(松井望美、南彰)

■国有地払い下げ適正か追及を

曽根泰教・慶応大教授(政治学)の話 首相の名誉を守るためや偽証罪で刑事罰に問うために国政調査権を発動するのは好ましくない。与党側の姿勢は、国会が国民に代わって調べるという国政調査権の意味を理解していない。いま国会が国政調査権を活用して追及すべきことは、多くの国民が腑(ふ)に落ちていない問題、すなわち国有地の払い下げが適正に行われていたかどうかだ。

国政調査権を発動した場合の主な調査対象・内容

自民党

●籠池氏が首相から受け取ったと主張する100万円の振り込み人

日本郵便に払い込み取扱票(振込用紙)の原本を請求して筆跡鑑定する

●籠池氏が「安倍晋三記念小学校」名で寄付を募った払い込み取扱票の使用期間

→(大阪府の私学審議会に)寄付者名簿を請求し、確認する

(※28日の西村康稔衆院議員らが記者会見で説明)

民進党

●学園との関係などに関する安倍昭恵氏の証言

●国有地売却に関する財務省国土交通省の資料

(※30日の山井和則国会対策委員長が記者会見で説明)