マクロンは本当に2017年フランス大統領選挙で有権者の支持を得ていたのか?

太田様

長らくご無沙汰しています。

次の疑問についてご教示ください。

1.コンドルセ式選挙制度を採用している国はあるのでしょうか。
私の知るかぎり、主要国でこの方式を採用しているところは無いと理解していますが、
これは間違っていますか。

2.シミュレーションの方式が十分理解できません。もう少し分かりやすく説明していただけませんか。
これについて記述しているこういう本を読みなさい、ということでも結構です。

3.フランスの制度に問題はありますが、コンドルセ式のほうが望ましいということに、いかなる意味があるのでしょうか。

4.フィヨンは、今回、明らかに不利な立場にありました。
私は、彼は予想より多くの得票を得た、と思います。
そのようなフィヨンが当選するような方式は望ましくない、と考えます。

よろしくお願いします。

阿久津孝志

—–Original Message—– From: OHTA, Mitsumasa
Sent: Friday, May 12, 2017 1:40 AM

[転送・転載歓迎します。重複受信の際はご容赦ください。]

2017年フランス大統領選挙はフランス式2回投票制によってマクロンが勝利を収めました。しかし、コンドルセ式選挙制度であれば、マクロン勝利という結果にはならなかった可能性があります。

コンドルセ式選挙制度とは、投票者が候補者すべてに選好順位を付けた投票を行い、候補者に総当たり戦、すなわちあらゆる組み合わせの2人対戦を行わせ、全投票者による絶対多数決で候補者間の選好順位を決めるものです。

実際の第1回投票では下記の有力4候補がかなりの接戦でした。

エマニュエル・マクロン(中道、無所属、新自由主義)
マリーヌ・ルペン(極右、国民戦線、保護主義)
フランソワ・フィヨン(中道右派、共和党、新自由主義)
ジャンリュック・メランション(左翼党、反新自由主義)

2017年フランス大統領選挙を下記の仮定で単純化して、コンドルセ式選挙制度のシミュレーションをしてみます。

仮定1:上記4候補が立候補し、第1選好投票(第1回投票に相当)の得票数は下記の通りとする。

マクロン 24
ルペン 23
フィヨン 22
メランション 21

仮定2:フィヨン支持者の選好順位はフィヨン>マクロン>メランション>ルペンとする。
仮定3:マクロン支持者の選好順位はマクロン>フィヨン>メランション>ルペンとする。
仮定4:メランション支持者の選好順位はメランション>フィヨン>マクロン>ルペンとする。
仮定5:ルペン支持者の選好順位はルペン>フィヨン>マクロン>メランションとする。

結果は、フィヨン>マクロン>メランション>ルペンという選好順位となり、マクロンではなくフィヨンが勝者となります。

コンドルセは、フランス式2回投票制のように相対多数の上位2名だけで決選投票を行うことの不合理を教えているのです。

太田光征

—————————–

阿久津さん

お元気でしたか。お久しぶりです。

On 2017/05/13 17:49, 阿久津 wrote:

太田様

長らくご無沙汰しています。

次の疑問についてご教示ください。

1.コンドルセ式選挙制度を採用している国はあるのでしょうか。
私の知るかぎり、主要国でこの方式を採用しているところは無いと理解していますが、
これは間違っていますか。

別便で他MLでの私からの応答メールを転送しますが、その中でも指摘したように、私も採用国は把握していません。

 2.シミュレーションの方式が十分理解できません。もう少し分かりやすく説明していただけませんか。
これについて記述しているこういう本を読みなさい、ということでも結構です。

投票者が一番目に好ましい候補者に一番、二番目に好ましい候補者に二番というように、全候補者に選好順位を付けます。そうすると、マクロン対ルペンなど、あらゆる組み合わせの2人対決についての全投票者の判断が分かります。つまり、第1回投票での1位マクロン、2位ルペンというのは、あくまでマクロンとルペンに投票した有権者だけの範囲内での両人に対する評価ですが、コンドルセ式制度の基本となる選好順位付き投票をすることで、「全投票者による全2人対決(総当たり戦)の評価」が可能となるのです。

例えば仮定2の「フィヨン支持者の選好順位はフィヨン>マクロン>メランション>ルペン」は、フィヨンに第1回投票で投じた有権者は、2番目に好ましい候補者にマクロンを、3番目に好ましい候補者にメランションを…というふうに選ぶということです。単純化していますので、フィヨン支持者すべてがこうした選好をすると仮定しています。

 3.フランスの制度に問題はありますが、コンドルセ式のほうが望ましいということに、いかなる意味があるのでしょうか。

候補者が4人いる場合、フィヨンがあらゆる2人対決で勝利し、つまり3勝し、かつ他の候補者はよくて2勝の場合、フィヨンを勝利者とするのが自然です。こうしたフィヨンを決選投票に参加させないフランス式2回投票制は民意を測定できないわけですから、コンドルセ式が優れていると思います。

 4.フィヨンは、今回、明らかに不利な立場にありました。
私は、彼は予想より多くの得票を得た、と思います。
そのようなフィヨンが当選するような方式は望ましくない、と考えます。

不利な立場という意味が理解できませんが、「フィヨンが当選するような方式は望ましくない」というご意見は、阿久津さんという1人の有権者が望ましくないと思う候補者を当選させる制度は望ましくない、ともとれます。

「選挙市民審議会」でも例えば独裁者を排除できる選挙制度が望ましいという意見も出ているのですが、選挙制度は原理的に特定の思想傾向の候補者を排除できる機能を持ち合わせていません。選挙制度はあくまでも有権者による候補者の判断を忠実に映し出すだけの仕組みを提供するものです。独裁者を排除できる選挙制度というものは倫理的にではなく機能的に無理というものです。別の仕掛けがないとできません。

最大の民意の支持を得ていない候補者が当選するのはけしからんという批判なら成り立ちますが、阿久津さんの4番のご質問の意味はいまいち分かりません。

ちなみに私はフィヨンがマクロンより優れているという判断をしているわけではなく、有権者の選好が仮定のようであるなら、民意に従って当選してしかるべきはフィヨンであるということを指摘することで、民意を忠実に測定できないフランス式2回投票制を批判したいわけです。

太田光征

 —————————–
転送します。

太田光征

——– Forwarded Message ——–
Subject: Re: [CML 048008] Re: マクロンは本当に2017年フランス大統領選挙で有権者の支持を得ていたのか?

まっぺんさん

反応していただきありがとうございます。仮定の正当性を主張したいというより、選挙制度の不公正さを説明するのが目的です。実際の選好順位についてはまっぺんさんが言われる通りかもしれません。

本日の選挙市民審議会でも首長選挙制度の改正案について議論したのですが、やはり上位2名だけに決選投票の参加資格を持たせるのは乱暴で、民意の反映を原理的に保証しません。

一番分かりやすい例は、確率的にはほとんどありませんが、第1回投票で各候補者の得票数が並んだ場合です。上位2名というのはありませんね。じゃあくじ引きで2名を決めていいかというと、やはりダメなのです。4人が並んだとしても、総当たり戦をさせてみれば、下記のように候補者間の選好順位が判明する可能性があるから。総当たり戦で3勝する候補者(この場合はフィヨン)が投票者から最も選好されていると評価するのが自然です。

そして各国の大統領選挙の制度を真に民意の反映したものに改革することは、米国の大統領選挙を見てみれば、非常に大きな意義のあることが分かります。これは世界の平和の問題などに大きな影響を与えるはずです。私はそういう観点から日本の選挙制度の改革に取り組んでいます。日本発の選挙制度改革運動で世界の民主主義革命をというのが私の夢です。

ようやく多数決のまやかしについての認識が広がり始めています。コンドルセなどに代表される社会的選択理論、すなわち数理科学の知見に裏打ちされた選挙制度というものは、私の知る限り、世界にありません。上位2名の決選投票など、「見かけの上で分かりやすい制度」があるだけです。

細かいことを言うと、私はボルダールールには反対です。ボルダールールというのは下記の例でいうと、投票者が選好順位を1位とした候補者に4点、2位に3点、3位に2点、4位に1点を与え、投票者をまたいで候補者ごとに点数を集計して、最多点数の候補者を当選させるという制度です。

一見して合理的なようですが、ある候補者が別々の投票者から1位と4位に選ばれた場合と2位と3位に選ばれた場合を同価値と見なしてしまうことに合理性があるでしょうか。投票者が候補者に付けた選好順位を勝手に候補者の得点にすり替えてしまうのです。相対的な選好順位という妥当な評価手法を加算性が強引に付与された得点という半絶対的な手法にすり替えているのがボルダールールで、コンドルセ勝者の勝利を保証しません。

太田光征

On 2017/05/12 12:40, まっぺん wrote:

まっぺんです。CMLの皆さんにはいつも貴重な情報やご教示をいただき感謝しており
ます。
太田さんの論について「反論」というほどの確信をもっているわけではないので「疑
問」として提出いたします。

フランス大統領選挙における太田さんのご意見には考えさせられるものがあります。
「上位2名」という方式がそもそも公平かどうか、というものですね。
その結論についてはともかく、ご提示のシミュレーションについての疑問です。
太田さんは以下のような場合を仮定していらっしゃいます。


マクロン   24
ルペン    23
フィヨン   22
メランション 21

仮定2:フィヨン支持者の選好順位はフィヨン>マクロン>メランション>ルペンと
する。
仮定3:マクロン支持者の選好順位はマクロン>フィヨン>メランション>ルペンと
する。
仮定4:メランション支持者の選好順位はメランション>フィヨン>マクロン>ルペ
ンとする。
仮定5:ルペン支持者の選好順位はルペン>フィヨン>マクロン>メランションとす
る。

この仮定によればコンドルセ式選挙制度ではフランソワ・フィヨンが1位となるだろ
う、ということですね。
それは、仮定3から仮定5まで全ての支持者が「2位にフィヨンを挙げている」からで
す。
それなら、そのような結論になるのは当然と言わねばなりません。
その場合にまず検証しなければならないのは、この仮定が自然であると考えられるか
どうか、です。
しかし、この仮定には無理があるのではないでしょうか。
それは「支持者は一番支持する候補を1位に、より自分に近い方の候補を2位に挙げ
る」
のが自然だと一般的に考えられるからです。そこで、4候補の支持者が2位に誰を挙
げるかを考えてみましょう。

今回の場合、
(1)「右翼か・左翼か」という基準で右から並べれば
ルペン(極右)フィヨン(中道右派)マクロン(中道)メランション(左派)

(2)経済政策では
ルペンは保護主義、メランションは反新自由主義、あとのふたりは新自由主義
という順序になります。

(1)の「右か左か」を基準にするなら、メランション支持者が二位にフィヨンを選
ぶのは考えにくい。
当然にもマクロンを選ぶでしょう。そうなれば、僅差でやはりマクロンなのではない
でしょうか?

(2)について、もうひとつの考え方ですが、「反新自由主義」を基準にするなら、
メランション支持者が2位にルペンを選ぶ可能性が考えられます。
これは米大統領選挙で失業者や低所得層が新自由主義の被害にたまりかねて
排外主義にすがりついた結果、トランプが選ばれたのに似ているように思います。

ただ、この可能性はあまりないでしょう。ナチス支配の経験を持つフランス人が極右
の排外主義者を選ぶ可能性は少ない。
実際、第2回投票でもルペンに大きく差をひろげてマクロンが勝っています。
また、これは今回だけの現象ではありません。15年前、ほぼまったく同じことが起
こっています。
2002年の大統領選挙では第1回投票で、1位が右派共和国連合のジャックシラ
ク、2位がルペンの父親のジャン・マリ・ルペン。
フランスでは大きな勢力を持つ社会党のリオネル・ジョスパンは通常は2位なのです
が、その時は3位で敗退しました。
この時は左右どちらの政権党もともに新自由主義政策であったため、それに反感を
もった有権者が
右派は極右へ、左派は極左へ、それぞれ票を投じた結果でした。
しかし極右派はルペンに統一できたが、極左派はバラバラであったため、このような
結果となったわけです。
この時の2回目の投票がフランス人の傾向をよく表しているように思います。
ルペンの得票は第1回目とほとんど変わらず18%ほどだったのに対してシラクは8
2%という驚異的な得票率となりました。
フランスの「反ファシズム」の伝統が非常に強固であるのを感じないではいられませ
ん。

結論としては、やはりマクロン当選はコンドルセ式でも動かないのではないだろう
か、というのが私の意見です。
もっとも、それももちろん「仮定」にすぎません。

—–Original Message—–
From: cml-bounces+mappen=red-mole.net@list.jca.apc.org
[mailto:cml-bounces+mappen=red-mole.net@list.jca.apc.org] On Behalf Of OHTA,
Mitsumasa
Sent: Friday, May 12, 2017 1:40 AM
To: uniting-peace@freeml.com
Subject: [CML 047997] マクロンは本当に2017年フランス大統領選挙で有権者の支持
を得ていたのか?

[転送・転載歓迎します。重複受信の際はご容赦ください。]

2017年フランス大統領選挙はフランス式2回投票制によってマクロンが勝利を収めま
した。しかし、コンドルセ式選挙制度であれば、マクロン勝利という結果にはならな
かった可能性があります。

コンドルセ式選挙制度とは、投票者が候補者すべてに選好順位を付けた投票を行い、
候補者に総当たり戦、すなわちあらゆる組み合わせの2人対戦を行わせ、全投票者に

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

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