安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画について、前川喜平・前文部科学事務次官が朝日新聞の取材に対し、昨年9~10月に和泉洋人・首相補佐官と首相官邸で複数回面会し、「総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」などと言われたと証言した。「獣医学部新設を早く認めるよう求める趣旨だった」と語った。

昨年9~10月は国家戦略特区での獣医学部新設について、内閣府文科省の担当者間で協議が続いており、農林水産省などから新設に必要とされる獣医師の需給見通しが示されないとして、文科省が慎重姿勢をとっていた時期にあたる。

前川氏の説明や同氏の手元の記録などによると、昨年9月上旬から10月中旬に首相官邸の補佐官室に複数回呼ばれ、いずれも和泉氏と2人きりで面会した。

前川氏は昨年9月上旬の面会について、「和泉氏から、獣医学部の新設を認める規制改革を早く進めるように、という趣旨のことを言われた。『加計学園』という具体名は出なかったと記憶しているが、加計学園の件であると受けとめた」と証言。そのうえで「このときに和泉氏から『総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う』と言われたことをはっきり覚えている」と語った。

ログイン前の続きこの面会で前川氏は和泉氏に明確な返答をしなかったといい、「大臣(松野博一文科相)に直接伝える必要はないと思い、面会の趣旨だけを担当の専門教育課に伝えた」と説明した。

一方、昨年10月中旬に面会した際のやり取りについて、前川氏は「『早く進めてほしい』という内容だった。タイムリミットということで焦っていたのではないかと思う」と語った。そのときも明確には返答をせず、その日のうちに、事務次官室で専門教育課の職員に対して面会の内容を伝えたという。

前川氏は今月25日の記者会見で、加計学園の獣医学部新設について、文科省内閣府から「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと伝えられたと記された文書について、昨年9~10月に「担当の専門教育課から報告を受けた際に受け取った文書に間違いない」と明言。この時期は、前川氏が和泉氏と面会した時期と重なっている。

■和泉首相補佐官「記録が残っておらず、確認できない」

和泉首相補佐官国土交通省住宅局長などを経て、第2次安倍政権発足直後の2013年1月に首相補佐官に就いた。地方創生などを担当している。

朝日新聞は29日、和泉氏に対し、昨年9~10月に複数回、首相官邸で前川氏と面会したか▽その際に「総理は自分の口から言えないから」といった発言をしたか▽加計学園の獣医学部新設について、安倍晋三首相から具体的な指示を受けたか――などについて文書で質問した。和泉氏側は「記録が残っておらず、確認できません」「具体的な指示を受けたことはありません」と文書で答えた。

また文科省専門教育課は、前川氏の証言について「承知していない。記憶にない」としている。

首相補佐官〉 首相官邸の機能強化策の一環として、橋本内閣で1996年、内閣法改正によって設けられたポスト。内閣の重要政策について首相に直接、助言することができる。2001年に3人から5人に増員された。安倍晋三首相は現在、国家安全保障、教育再生、地方創生などを担当する補佐官5人を起用。うち3人は国会議員。