真相が解明されていないのに、データを消してはならない。財務省は文書管理システムの更新を中止するべきだ。

学校法人・森友学園への国有地売却問題をめぐり、同省は学園との交渉記録などを「廃棄した」と主張している。しかし、バックアップデータから復元は可能という指摘もある。

このままでは6月から新システムに移行し、旧システム上のデータは2カ月かけて消去される。機器の入れ替えで復元が物理的に不可能になる前に、情報の保全を優先すべきだ。

「記録は残っていない」という同省の説明を、うのみにはできない。新たな資料が明らかになるたび、後追いで釈明する姿勢に終始してきたからだ。

今月も新たな疑惑が発覚した。国有地の売却が決まる前の2016年4月。近畿財務局が価格の評価を不動産鑑定士に頼んだ際、ごみ撤去費に加え、高層建築を想定した約5億円の地盤改良費も考えて値引きを求めていたことが明らかになった。

着工済みの校舎は3階建てなのに、財務局は高層建築が前提の資料を鑑定士に渡し、評価での「考慮」を求めていた。

国会で佐川宣寿理財局長は「地盤の状況について考慮してくださいというのは普通のこと」と答弁したが、不必要な値引きまで示唆するような条件をなぜ示したのか。今まで黙っていたことも不可解だ。

森友問題では調べたい記録類が、ほかにもたくさんある。

安倍首相の妻の昭恵氏付職員が学園側にファクスを送った際、財務省は事前に職員とどんなやりとりをしたのか。

同省は、売買契約締結までの手続きを学園に「親切に」手順書まで示していたが、これがつくられるにいたった経緯。

学園の籠池(かごいけ)泰典・前理事長と財務省室長の面会について、同省の面談記録はないのか。

廃棄したなら、職員から聞き取りをして記録を作成することや手控えのメモの調査など方法はある。NPO法人は、パソコンから削除された情報のバックアップデータなどの証拠保全を東京地裁に申し立てたが、6月を目前に控え、同省が自主的にデータの保存をすべきだ。

学校法人・加計(かけ)学園の獣医学部新設問題でも、前文部科学事務次官が「ある」と話している文書を、安倍政権は怪文書扱いし、前次官への人格攻撃で問題をすり替えようとしている。

問われているのは政府の公文書管理に対する姿勢だ。都合の悪い資料をなかったことにするような態度は許されない。

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