ムヒカ元大統領の妻 激動人生  

ムヒカ元大統領の妻 激動人生
【書評】「信念の女(ひと)、ルシア・トポランスキー」
佐藤美由紀著 双葉社 1512円

「世界で最も貧しい大統領」と言えば、ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領である。
農園に住み、給料の大部分を寄付して月10万円ほどで暮らす清貧な生活は、
日本でも大きく報じられた。
質素を尊び、民衆に寄り添うその生き様は、世界中から敬愛されている。

そんなムヒカを支え、共に闘い続けてきた妻ルシアに光を当てたのが本書だ。
偉人の妻の物語と聞いて、内助の功をたたえた内容を想像されたかもしれない。
しかし、読み進めるうちに多くの方が、妻としての振る舞い以上に、
ルシア自身が放つ強烈な迫力と存在感に心を奪われることだろう。
本書は、貧困や格差と真正面から対峙(たいじ)し、社会の不平等解消を自らの
使命として闘い続ける、一人の女性社会活動家の激動の人生をつづったものである。

裕福な家庭に生まれながらも、人一倍正義感の強いルシア。
10代で慈善活動にいそしみ、貧困にあえぐ人々の過酷な現実を
目の当たりにした彼女は、その苦しみをわがこととして痛み、憤り、
格差のない社会の実現のために立ち上がる。
20代で政治運動に身を投じ、やがて革命を志し極左武装組織に参加して、
ゲリラ活動のリーダー的存在としてその名をとどろかせていく。

覚悟のほどがすさまじい。
非人道的な激しい拷問を受けながら13年もの獄中生活に耐え続けた。
別の獄にいた同志であり恋人のムヒカから届いた手紙は、たった一通だけ。
読み進めるほどルシアのたどる道の険しさに息が詰まる。
身も心もささげ、これほどまでに彼女を突き進ませたものー。
そこにあるのは、社会の矛盾に苦しめられている人々への深い共感であろう。

釈放後はムヒカとともに政治家としての道を歩んでいく。
「みんなと幸せを共有することが自分にとっての幸福なの」と語り、
今日も民衆の声を聞く。

学生時代の慈善活動も、命がけのゲリラ戦も、議員としての活動も、
そして「世界で最も貧しいファーストレディー」としての日々も、
ルシアにとっては全く同じ活動、そしてそれが彼女の人生。
心の底を熱く揺さぶられる一冊である。

著者は広島県出身。フリーライター。
2015年の「世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉」
がベストセラーに。

中川美紀(ビジネスアナリスト)本紙書評委員
2017年6月11日 信濃毎日新聞

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

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