首相演説へのヤジを報じぬNHK あの声はどこに行ったのか  

首相演説へのヤジを報じぬNHK あの声はどこに行ったのか
週刊テレビ評 =金平茂紀 毎日新聞2017年7月7日 東京夕刊

東京都議選で自民党が惨敗を喫した。この半年を振り返れば、逆風は明らかだった。
その逆風を、メディア、特にテレビ報道はありのまま報じてきただろうか。そのことを
考える上で格好の材料がある。

都議選の投票日前日、東京・秋葉原で安倍晋三首相は唯一かつ最後の街頭演説を行っ
た。秋葉原といえば、安倍首相支持勢力のいわば「聖地」のような場所で、日の丸の小
旗を手にした安倍首相支持の群衆であふれかえるのがパターンだった。ところがこの日
は、大勢の市民から「安倍辞めろ」「帰れ」コールが湧きおこり、演説場所は騒然とし
た空気となった。演壇から向かって右手奥に陣取った人々から発せられた「辞めろ」「
帰れ」コールは、街宣車の上からのスピーチを聞き取りにくくするほどの大音声となっ
ていた。

1人でその場にいた政治学者の白井聡さんによれば、組織的な呼びかけによる行動と
いうよりも、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などの情報に基づい
て1人で来た人たちの自然発生的な「うねり」のようなものを強く感じたという。僕は
当日は生放送があったので、現場に取材に行けなかったが、現場にいた記者やカメラマ
ンたちから話を聞くと、今回は今までになかったことが起きていたという。

映像で細かく見た。確かに安倍首相の演説の最中、ずっと「安倍辞めろ」コールが続
いていた。当然本人の耳にも入っている。普通の人間なら反応せざるを得ないレベルの
音量に達していた。午後5時3分40秒ごろ、堪忍袋の緒が切れたように安倍首相は「
こんな人たちに私たちは負けるわけにはいかない!」と声を張り上げた。ところが、そ
れを聞いた人々の間でさらに「辞めろ」の声が一段と強くなったのだ。

当日、TBSのニュースはこの秋葉原演説を「激しいヤジが飛ぶなかで」と明言して
報じていたが、なぜかNHKの午後7時のニュースでは、このヤジが報じられず、安倍
首相の演説の音をメインにして放送されていた。あれらの人々の声はどこに行ったのか
? あの場所で起きていたニュースとは一体何だったのか?

1989年12月、ルーマニアのチャウシェスク政権が首都ブカレストで政権支持派
の10万人集会を開き、国営ルーマニア放送が生中継していた。チャウシェスク大統領
の演説の最中、1人の男がヤジを叫んだ。それをきっかけに集会は大混乱となり、さら
に治安警察が鎮圧に動いたことで反政府暴動に発展、ルーマニア革命が起きた。

それでもテレビ屋か?と僕は言いたい。(テレビ報道記者)

====

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close