トランプ米政権の「ロシア疑惑」を巡って解任されたコミー前連邦捜査局(FBI)長官が、トランプ大統領とのやり取りを記した「コミー・メモ」。コロンビア大学法科大学院のダニエル・リッチマン教授が13日、報道を通じた公表に携わったことを朝日新聞の取材に認め、内幕を語った。「大統領が司法に圧力をかけようとしているということを表に出すことは重要だと考えた」と公表の正当性を訴えた。

メモの存在はコミー氏解任から1週間後の5月16日にニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が特報した。報道を受け、トランプ氏への批判や公正な捜査を求める声が集中。司法省はホワイトハウスの意向に逆らい、独立性の高い特別検察官の任命に踏み切った。

ロシア疑惑の焦点の一つは、トランプ氏が司法妨害したかどうかだ。特別検察官の捜査が進む中、大統領による「圧力」の証拠となり得る資料を明るみに出した当事者の証言は貴重だ。

リッチマン氏とコミー氏は元検事。30年前、ニューヨークの地方検察庁で同僚だった親友だ。リッチマン氏は「コミー氏が私にメモを渡したのは、私のよく知るNYT記者に内容を伝えるためだった」「どの部分を伝えるかは、コミー氏が決めた」と説明した。

ログイン前の続きメモには、トランプ氏が2月、フリン前大統領補佐官に関する捜査について「やり過ごしてほしい」と中止を求めた内容が含まれていたという。「この国(の人たち)が、本当に知る必要があるものだと分かった」。受け取ったメモは、特別検察官側に提出したという。

トランプ氏は、コミー氏のメモに機密情報が含まれているとして「メディアに流すのは違法だ」などと批判している。リッチマン氏の元には大量の抗議のメールや電話が寄せられたという。これに対し、リッチマン氏は「メモは、その時は機密扱いではなかった」と主張。「法律の知識が少しでもあれば、合法的な行為だと分かる」と反論した。また抗議について、「論議を呼ぶだろうと予期していた。耐えられるものだ」と述べた。(ニューヨーク=杉山正)