週刊文春 2017年7月20日号
「まさかダブルスコアで負けるとは……」
農協幹部がこう絶句したのは、5日に開票された全国農業協同組合中央会(JA全中)の
会長選挙だ。結果は、JA和歌山中央会会長の中家徹氏(67)が152票を獲得し、88票の
須藤正敏・JA東京中央会会長を破った。
前回の2015年にも出馬した中家氏は、奥野長衛氏に敗北。定年で勇退する奥野会長が推
す須藤氏が有利との観測もあっただけに、先の農協幹部は「ここまで差がつくとは意外
だ」と驚きを隠せない。
「農協改革の旗を振ってきた小泉進次郎・自民党農林部会長と、農水省の奥原正明事務
次官にとって非常にショックな選挙結果でしょう。JAの総意として、NOが突き付けられ
た。小泉・奥原両氏に理解を示してきた奥野路線からの転換は避けられない」(同前)
中家氏は、記者会見で、さっそく政府主導の農業改革について、「改革は必要だが、守
らなければならないものもある」と釘を刺した。
中家氏はJAグループが創設した中央協同組合学園(現JA全国教育センター)1期生で、
同学園校友会会長でもある。
「宮脇朝男元全中会長を恩師と仰ぎ、農協スピリットである協同組合主義者。経産省に
近い奥原次官の対極にいる人物です」(農協関係者)
その中家氏を陰で強力に支援したのは、農畜産物の販売や生産資材の供給を担うJA全農
のドン・中野吉實会長というのが農協関係者の共通した見方だ。中野会長は「日本の肥
料や農薬は韓国の2倍、3倍高い」と小泉氏から糾弾され、昨年の全農改革で煮え湯を飲
まされた経緯がある。
小泉氏と奥原氏が進める農協改革の最終目標は、協同組合組織の農協を株式会社化させ
、金融部門を分離することにあると見られている。税制など各種の恩典がある協同組合
組織を株式会社に転換し、儲け頭の金融を分離して農協は生き残れるのか。
「来年12月までには衆院選もある。これまでは、菅義偉官房長官が後ろ盾になってきた
が、安倍政権の支持率が急落し、自民党議員も黙っていないだろう。中家氏のバックに
は、同郷の二階俊博幹事長もいます」(同前)
農協の乱は、安倍政権をも揺るがしそうだ。
http://bunshun.jp/articles/-/3312
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