「森友学園」前理事長の籠池泰典容疑者(64)と妻の諄子容疑者(60)が31日、詐欺の疑いで大阪地検特捜部に逮捕された。国有地売却問題を追及していた地元市議は改めて背景の解明を求めた。▼1面参照

籠池夫妻は午後1時半ごろ、大阪地検大阪市福島区)に向かうため、家族が運転する車で自宅を出発した。集ログイン前の続きまった報道陣から「前回(の事情聴取時)は黙秘でしたが、今回は何か話しますか」などの質問が飛んだが、何も答えずに車に乗り込んだ。

午後2時15分ごろ、籠池夫妻が乗った車が到着すると、ニットを着た諄子容疑者が降り、手提げ袋を持った泰典容疑者も続いた。

関係者によると、泰典容疑者は出頭前、知人に「帰ってきたらまた囲み(取材への対応)をやるのかな」「聴取が終わってから決めましょう」などと語り、いつもと変わった様子はなかったという。

大阪地検は改めて籠池夫妻宅を家宅捜索。午後8時ごろ、係官ら約10人が到着し、玄関先で押し問答となり、捜索令状を見た家族が読み上げるなどのやりとりがあった後、約30分後に係官らは段ボール箱などを持って屋内に入った。

大阪地検では午後8時15分から山本真千子特捜部長が報道陣の取材に応じた。逮捕容疑などについて質問が相次いだ。国有地売買をめぐる財務省近畿財務局職員による背任の疑いに関する問いに対しては、「捜査中です」と即答した。

■「制度の悪用だ」「本筋と無関係」

「(制度が)悪用されたということ」。逮捕容疑が国土交通省の補助金にからむものになったことについて、同省幹部は淡々と話した。「全額を返しても違反でなくなるわけではない」

一方、国有地を森友学園に不当に安く売った背任容疑で近畿財務局の職員(氏名不詳)を大阪地検に告発した大阪府豊中市の木村真市議は「逮捕容疑は本筋と関係なく、付随して浮上した問題に過ぎない」と指摘。「近畿財務局強制捜査や、安倍昭恵首相夫人の事情聴取をしっかりするべきだ」として背任容疑での捜査に期待を寄せた。

■小学校開校へ「今しかない」

教育勅語の奉唱」「軍歌・戦時歌謡の類の斉唱」「伊勢神宮参拝旅行」「自衛隊行事への参加」――。

森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)で実践された教育の中身だ。

幼児教育だけでなく、連続性のある教育が必要だ」。学園前理事長の籠池泰典容疑者は、8年ほど前にそんな思いから小学校の新設に動いたと、周囲に話していた。

その小学校の名誉校長だった安倍晋三首相の妻・昭恵氏も、塚本幼稚園での講演会で「ここの幼稚園だけで終わっていくのはもったいない」と呼応した。

復古色が強い、このような教育を引き継ぐ小学校の建設用地として、大阪府豊中市の国有地が、鑑定価格より8億1900万円安い1億3400万円で学園に売却された。

<新宗教が転機> 1953年2月、泰典容疑者は四国・高松で生まれた。逮捕前の本人への取材によると、一族は海運会社を営んでいた。地元の住民に話を聞くと、会社は瀬戸内の島々に生活用品を運び、盛んなころは、船が発着する高松港の一角が「籠池」と地名のように呼ばれていたという。

父の代に事業が行き詰まり、一家は高松を離れた。小学生だった泰典容疑者は親戚に預けられるなど、兵庫や大阪を転々とした。

77年に奈良県庁に就職。2年後に森友学園創始者の森友寛氏の娘、諄子容疑者(60)と結婚した。

妊娠、出産にまつわる諄子容疑者の体調不良により、「精神的な支え」を求めていた時、新宗教「生長の家」と出会った。病と心のあり方の関係を説く生長の家は当時、「愛国」をうたい、政治運動もしていた。「日本について思いを致すようになった」のはこの頃だと泰典容疑者は振り返る。

84年に県庁を退職。森友学園関連の別法人が運営していた幼稚園(大阪市住之江区、休園)で10年ほど修業し、95年に寛氏が亡くなると、塚本幼稚園を運営する森友学園の理事長に就いた。

2000年代は、教育の目標に「日本の伝統と文化の尊重」や「愛国心郷土愛」を盛り込んだ教育基本法改正運動に没頭し、園児に教育勅語を素読させるなど、保守的な傾向をさらに強めていった。

<政治家と接触> 保守系の政治家とのつながりも深めていった。寛氏が支援していた大阪府議らとの付き合いは以前からあったが、国会議員や閣僚経験者にも次々と接触。保守活動家の男性によると、幼稚園を活動に伴う会合の会場として貸す代わりに、鴻池祥肇・元防災担当相らへの講演依頼の橋渡しを、たびたび頼まれたという。

「思考的な蓄積や人脈ができてきた。今しかない」。09年ごろ、泰典容疑者は保守人脈から寄付を募りつつ、小学校開校へ動き始めた。著名な政治家に面会できると、必ず一緒に写真に納まった。もちろん、昭恵氏との写真もある。男性はこんな行動を、「まるで自分に箔(はく)をつけているように見えた」と表現した。

森友学園を巡る一連の問題では、安倍首相の夫人である昭恵氏との関係を役人が「忖度(そんたく)」し、国民の財産である国有地が大幅に値引きされたとする疑いが浮上した。捜査はまだ、始まったばかりだ。

刑事事件に発展した森友学園疑惑。小学校用地として、国有地が格安で売られるまでの経緯を探る。