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 「最優先すべきは経済の再生」「(経済再生相には)アベノミクスをさらに加速させてもらいたい」

内閣改造後の記者会見で、安倍首相はそう強調した。「またか」と聞いた人も少なくないだろうが、ここは経済政策への基本的な姿勢を問いたい。

景気をよくすることは大切だが、国民が求めているのはそれだけではない。高齢化で費用が膨らむ社会保障を、先進国のなかで最悪の財政でどう支えていくのか。将来への不安の解消に努めることも、最優先で取り組むべき課題である。

安倍政権経済政策アベノミクス」は、デフレ脱却を達成し、経済成長を追い求めることが柱だ。成長で税収が増え、財政再建社会保障の維持・充実も実現できると説明する。

首相は2012年に政権に返り咲くと、大胆な金融政策、機動的な財政運営、成長戦略の「3本の矢」で「経済政策を力強く進める」と宣言し、国民の期待を集めた。しかし実際は、集団的自衛権の行使容認や安保関連法の成立、さらには憲法改正と、自らの政治的悲願の達成に力を注ぐ局面が目立った。

批判が高まると、そのたびに「次は経済」と唱える。目先の景気にばかり力を注ぐ姿勢は変わらない。社会保障の財源になる10%への消費増税は、「アベノミクスの成功を確かなものとする」(14年11月)、「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」(16年6月)として、立て続けに延期した。

この4年半で見えてきたのは、政策の行き詰まりだ。

物価上昇率は目標の2%に一向に届かない。20年度に基礎的財政収支を黒字化するという財政再建目標の達成も絶望的だ。金融緩和財政出動も余地が狭まるなか、毎年策定する成長戦略は項目が積み上がるが、もともと短期間で成果を期待できる「魔法の杖」ではない。

首相は、そうした現状を認めるべきではないか。

女性活躍、1億総活躍、働き方改革ときて、今度は「人づくり革命」だという。こうしたかけ声のもとで必要な改革がいくつか進んだのは確かだが、それぞれの総括を欠いたままでは、アベノミクスの行き詰まりを取り繕うために目先を変えていると言われても仕方がない。

国民が求めるのは新しい看板ではない。暮らしがよくなったと実感できること、そして将来を安心して展望できることだ。

人口が減るなか、22年には団塊の世代が75歳になり始める。無駄にできる時間はない。

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