森友・加計(かけ)問題=キーワード=で「丁寧に説明する」と繰り返す安倍晋三首相。だが8日の日本記者クラブ主催の党首討論会では、自らの関与を強く否定する一方、問いに直接答えなかったり、報道に矛先を向けたりと丁寧とは言えない答えに終始した。政治の公平性、行政の透明性に関わるだけに、野党は衆院選でも重要ログイン前の続きな論点に据える構えだ。▼1面参照

■関与「誰も証言してない」 従来説明、繰り返し主張

「森友・加計問題で、結果的に一番偉い方(首相)の友達が優遇されたことに、安倍さんはこれまで何もおっしゃっていない。その辺はいかがか」。党首討論会の質疑で、毎日新聞の倉重篤郎・専門編集委員は、森友学園への国有地売却や加計学園の獣医学部の新設問題について、首相の「結果責任」を問うた。

だが安倍首相は、森友学園の籠池泰典・前理事長について「一回もお目にかかったことはない」と述べて「友達」ではないとことわり、質問には直接答えずに「獣医学部の申請をしてきたのは15年間、加計学園のみで、安倍内閣でも5回却下している」と手続きに問題はないことを強調した。

倉重氏は「聞いているのはそこではない。最高責任者として責任を感じないのか」と改めてただしたが、首相は「15年間、(申請は)1校しかなく、50年間、獣医学部が設立されなかったことがよかったのか」と主張。倉重氏が「(獣医学部の)必要性を聞いているのではない」と遮り、「他の候補も手を挙げているところで、ゴルフも会食もしている方(加計学園の加計孝太郎理事長)が結果的に厚遇を受けたことに何も感じないのか」と詰めると、ここで首相は「疑いをもたれることは当然のことで、もっと慎重であるべきだった」と答えた。

この日の首相の答え方にはパターンのようなものがあった。加計学園に関する質問には、まず「国会で丁寧に説明を重ねてきた」と主張。次に「(国会の中で)私が関与したと言った方は一人もいない」と強調して、さらに、国家戦略特区ワーキンググループの八田達夫座長や加戸守行・前愛媛県知事ら、特区での獣医学部新設を推進する側の主張が十分に報道されていないと指摘する。質問に答えるというより、自らの主張を述べることに重点があったようにもみえる。

もう一つ、討論で活発なやりとりになったのが安倍首相自身の国会答弁だ。

7月の衆院予算委員会閉会中審査で、今回の加計学園の獣医学部計画をいつ知ったのか問われた首相は、「申請が正式に認められた(今年1月20日の)国家戦略特区諮問会議で知るに至った」と答えていた。その一方で、「腹心の友」と呼ぶ加計理事長について「新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨の話は聞いたことがある」とも答弁しており、1月20日より前に計画を知っていたのではないかとの疑念が残る。

朝日新聞の坪井ゆづる論説委員が「『新しい学部や学科』について、具体的に何も言わなかったのか」と問うと、首相は「それ以上、話に興味がありませんでしたから、そうだなと思った」と述べた。

加計問題については、首相や首相官邸側の関与をうかがわせる文書や証言がいくつも明らかになっているが、関係者は「記憶にない」「記録はない」などと繰り返してきた。

こうした安倍政権の姿勢に、身内からも不満の声が上がる。自民党小泉進次郎・筆頭副幹事長は8日、東京・渋谷駅前での街頭演説で「森友学園加計学園の問題が起き始めてから、(国民の)厳しい目線が始まったのは否定しようもない事実」と指摘。「不信感にけりをつけて再スタートを切れるかどうか、説明できるのは安倍首相以外にいない。厳しい目とも向き合って、逃げずに正面から受け止めてほしい」と述べた。

■小池氏「情報公開が足りない」 志位氏「冒頭解散は疑惑隠し」

野党側は問題を明らかにする場になるはずだった臨時国会の冒頭での解散を、首相による森友・加計学園問題の「疑惑隠し」と改めてとらえ、政府の説明責任や行政の情報公開のありようを問う。

「森友・加計疑惑等々で情報公開が足りていない。公文書管理も重要な課題だ。国民は十分に納得していないのではないか」

8日の党首討論会で、真っ先に首相を追及したのは希望の党の小池百合子代表だった。首相が「丁寧に説明を重ねてきた」などと従来通りの答えでかわそうとすると、「(首相の)冒頭解散の政策判断について、情報公開を求めてもたぶん無理だ」と、その姿勢を皮肉った。

先の通常国会では、首相自らが問題について十分な説明を尽くさなかったり、財務官僚が資料を廃棄したといって答弁を拒んだり、説明責任や情報公開を軽んじる政権の対応が問題視された。

同党の政策集では「『隠ぺいゼロ』の断行」を明記。国や国会の情報管理のあり方を見直したり公文書管理法を改正したりして、行政文書を非開示にできる理由を大胆に絞り、恣意(しい)的な廃棄を禁ずる、とした。

共産党志位和夫委員長も党首討論会の冒頭発言で、「こんな異常な国政私物化疑惑にまみれた政権はかつてない」と批判。さらに「冒頭解散を強行した理由はただ一つ。『森友・加計疑惑隠し』以外にない。そうでないなら解散の理由をはっきり説明してもらいたい」と首相にただした。

衆院選公約で「森友・加計疑惑の徹底究明」を重点政策の最初に掲げ、首相の妻昭恵氏加計学園の加計孝太郎理事長の証人喚問を要求する。公文書管理と情報公開のあり方を根本から改めると訴え、官邸主導の人事が官僚の萎縮や説明拒否を招いたとして内閣人事局の廃止も求めている。

立憲民主党枝野幸男代表は党首討論会で森友・加計問題に触れなかったが、選挙公約では「徹底して行政の情報を公開します」と記した。7日の政策発表の記者会見では、福山哲郎幹事長が「情報は隠す、文書は捨てる、記憶は忘れる。こんな国会審議はまさに民主主義の破壊だ」と政権の姿勢を批判した。

朝日新聞の9月の世論調査では、森友・加計問題に対するこれまでの首相の説明が「十分でない」が79%に上った。

社民党吉田忠智党首は「国民の疑惑が晴れない最大の原因はキーパーソンが国会に来て発言しないことだ」と指摘。共産と同様、昭恵氏と加計氏の証人喚問を要求した。公約では「私物化する国家戦略特区を廃止する」と記す。一方、日本維新の会松井一郎代表と、日本のこころの中野正志代表は、この日の党首討論会で森友・加計問題には触れず、公約にも関連する項目は入っていない。

■首相「朝日新聞、ほとんど報道してない」 3月以降、10回以上掲載 国家戦略特区WG座長の発言など

党首討論会では、安倍首相加計学園問題についての報道のあり方に注文をつける場面があった。首相はこれまでも民放の番組などで、国家戦略特区での獣医学部新設を推進する側が「手続きに問題はなかった」などと主張していることを、もっと報じるよう求めてきた。

党首討論会で朝日新聞の坪井ゆづる論説委員は今年7月の衆参予算委員会閉会中審査で、首相が加計学園の獣医学部新設計画を知ったのは今年1月20日だったとした発言をただした。

だが安倍首相は直接答えず、「まず、朝日新聞は八田(達夫・国家戦略特区ワーキンググループ座長)さんの報道もしておられない」と返した。坪井論説委員が「しています」と反論すると、「ほとんどしておられない。しているというのはちょっとですよ。アリバイ作りにしかしておられない。加戸(守行・前愛媛県知事)さんについては、(国会で)証言された次の日には全くしておられない」と述べ、坪井論説委員は再度、「しています」と反論した。

朝日新聞(東京本社発行の最終版)は、閉会中審査での八田氏の発言について、7月25日付の朝刊で獣医学部新設の決定プロセスを「一点の曇りもない」とした答弁や、「不公平な行政が正された」とする見解を掲載した。また、こうした国会での発言も含め、八田氏に単独取材した今年3月下旬以降に10回以上、八田氏の発言や内閣府のホームページで公表された見解などを掲載してきた。

加戸氏については、閉会中審査が開かれた翌日の7月11日と25日付の朝刊で、国会でのやりとりの詳細を伝える記事で見出しを立てて報じたり、総合2面の「時時刻刻」の中で発言を引用したりしている。

◆キーワード

森友学園への国有地売却問題> 学校法人森友学園大阪市)が計画していた小学校建設用地として、財務省が昨年、大阪府豊中市の国有地を鑑定価格から約8億2千万円値引きし、1億3400万円で売却した問題。名誉校長に安倍首相の妻・昭恵氏が就いていた。野党は首相周辺の意向を忖度(そんたく)した財務省が値引きしたのではと追及したが、国は「適正に算定した」としてきた。大阪地検は国や大阪府・市からの補助金を詐取したとして、学園の籠池泰典・前理事長と妻を詐欺罪などで起訴し、売却の経緯なども調べている。

加計学園の獣医学部新設問題> 国家戦略特区の事業として、加計学園が運営する岡山理科大獣医学部の愛媛県今治市への新設計画が今年1月、認められた。文部科学省の審議会が来年4月の開学の可否を10月中にも判断する。今治市は建設用地を無償譲渡したほか、愛媛県と合わせ96億円の建設費を補助する方向で調整中。同学園理事長は安倍晋三首相の長年の友人。獣医学部に関し、「総理のご意向」などと書かれた文科省の文書など首相や首相官邸側の関与をうかがわせる文書や証言が複数明らかになっている。