世界中が壊れていく現在の状況は、いつ、どのようにして始まったのか

「14歳からのパレスチナ問題」奈良本英祐著
評者 板垣雄三(東大名誉教授) 本紙書評委員
全世代へ 謎の塊を解きほぐす 信濃毎日新聞 2017年11月5日

今年は、英国政府が私利私欲からユダヤ人の国づくりに賛成した
バルフォア宣言(1917年11月2日)100周年。
米国とソ連の不思議にそろった思惑が、国連パレスチナ分割決議
(47年11月29日)をゴリ押しで実現。
それまでに、ナチズムが欧州からユダヤ人青年をパレスチナに追い出し、
イスラエル独立(48年5月14日)を準備。
欧米の人々はパレスチナ人を追い出すこの独立を
ホロコーストの償いだと言って支持。
やがて、この不正義に抵抗する人はテロリストと扱われる。

世界中が壊れていく現在の状況は、いつ、どのようにして始まったのか。
前記100年前からのボタンの掛け違いに発するものではないのか。
パレスチナ問題には、異邦人=非ユダヤ人の宗教を標榜(ひょうぼう)
するキリスト教の暗部“ユダヤ人迫害の伝統を抱える欧米の歴史の闇“
が付きまとう。
それはパレスチナ人を新たな離散の民=新しい〈ユダヤ人〉
に仕立て上げる構造なのだ。
だからパレスチナ問題は、欧米中心の秩序が世界中に発生させてきた
不公正の結び目なのである。

混沌(こんとん)世界の渦巻(うずまき)はみな、
パレスチナと繋(つな)がっている。
中東諸国の改題、北朝鮮の力み、EUの動揺、トランプ政権の漂流、
ユネスコへの脅迫、切迫する偶発の世界核戦争、、、何もかも。

ことさらパレスチナ問題を知らなければならないのは、
世界の未来に運命が懸る若者たちだ。
著者は、14歳からの読者を相手に、
この謎の塊を解きほぐそうと挑戦する。
ジャーナリストの感覚を土台に研究者としてパレスチナ問題と
じかに向き合いその変転を凝視し続けてきた著者の、
語り方・読ませ方はさすが。
複雑な時系列や連関の要所要所を、切れ味よく整理して示す。
結局、本書は全世代が読むべき歴史叙述であり、
奥深く意味深長な問題提起の書ともなっている。

報道は、とかくパレスチナ問題隠しに手を貸してきた。
ガザを忘れ、シリア難民だけ、次はロヒンギャだけ、指さすといった具合に。
著者の立場は、地球上のいのちを区別することなく大事にせよ、
と迫る公平さだ。
(合同出版、1598円)

著者は1941年生まれ。法政大名誉教授。
毎日新聞記者を経て2012年まで法政大教員。
著書に「パレスチナの歴史」など。

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MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace

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