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連載:社説
2017年11月26日05時00分
原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を、どこでどう最終処分するか。この難題について国民全体で議論を深めていくために、国の説明会のあり方を根本から見直す必要がある。
資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)が10月から都道府県ごとに順次開いている説明会で、学生ら参加者の一部に金品の提供が持ちかけられていた。東京や埼玉など計5会場で39人にのぼる。
若者向けの広報業務を委託した業者が独断で行い、議論に影響はなかったというが、説明会の公正性や信頼性を損ないかねない。NUMOが過去にさかのぼって調査し、再発防止策を検討し始めたのは当然だろう。
同時に、開催を通じて浮かび上がってきた他の課題にも、しっかりと向き合うべきだ。
会は、最終処分地の候補となりうる地域を示した「科学的特性マップ」の説明などが中心の1部と、少人数に分かれて意見交換する2部からなる。各回の定員は100人だが大半の会場で満席にならず、特に2部の参加者は20~30人ほどにとどまっている。主催者の都合で平日午後に開いているため、仕事のある人が参加しにくいようだ。
半年間で福島県を除く全都道府県をカバーするというが、スケジュールありきで開催自体が目的になっていないか。業者が学生を動員したのも、主催者の意向を忖度(そんたく)し、出席者が少ないうえに年長者ばかりではよくないと考えたからではないか。
言うまでもなく、説明会の目的は開催の実績作りではない。使用済み燃料に関する課題を国民全体で共有し、議論を深めていくことだ。
東京の会場では、冒頭に流したビデオ映像について、参加者から「不適切」との指摘が出た。使用済み燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出し、再び利用する核燃料サイクル事業が、あたかも確立しているかのように受け取れる内容だったからだ。
廃炉が決まった高速増殖炉「もんじゅ」が象徴する通り、核燃料サイクルの破綻(はたん)は明らかだ。海外では最終処分地を決めたフィンランドをはじめ、使用済み燃料を再処理せずに埋める「直接処分」が主流である。
国とNUMOは、自らに都合の悪い情報も伝え、幅広い意見に耳を傾けるべきだ。いまの原子力政策の継続を前提とする議論しか認めないような姿勢では、国民の不信感を強めるだけで、最終処分地選びへの理解は広がらない。