国際常識を欠いた暴言である。撤回すれば済むという話ではない。
前地方創生担当相の山本幸三・自民党衆院議員が、アフリカ諸国との交流に取り組む同僚議員の活動について「何であんな黒いのが好きなんだ」と発言した問題である。
発言は、北九州市で開かれた三原朝彦・自民党衆院議員のセミナーで飛び出した。三原氏は日本・アフリカ連合友好議員連盟の会長代行を務め、現地を訪れてもいる。
山本氏は発言が報道されると「アフリカは『黒い大陸』と呼ばれていた」「差別的な意図はない」などと苦しい釈明をしたが、とても通用しないだろう。
過去にも政治家の「黒人差別発言」が問題になったことがある。
1980年代、当時の中曽根康弘首相や渡辺美智雄・自民党政調会長の発言に米黒人議員連盟が反発し、抗議運動に発展した。
今は当時と比べグローバル化が進み、人権意識が一層共有されるようになっている。そんな国際常識から隔絶されたように、まるで黒人を見下すような発言には、国会議員としての資質を疑わざるを得ない。
先週は自民党の竹下亘総務会長が宮中晩さん会への国賓の「同性パートナー」出席に反対し問題化した。これも性的少数者の権利を認める世界の流れに逆行する発言だった。
山本氏の発言はまた、日本が力を入れている対アフリカ外交の足を引っ張るものでもある。
日本はアフリカ諸国との協力を進めるため、93年から5年おきに首脳を招いてアフリカ開発会議(TICAD)を開いてきた。初めてアフリカで開催された昨年8月の会議には安倍晋三首相が出席し、アフリカ諸国との連帯を訴えた。安倍首相は2014年、首相としては約8年ぶりにアフリカを歴訪している。
こうして積み重ねてきた対アフリカ外交の取り組みを、山本氏の発言は踏みにじることになる。
山本氏は地方創生担当相時代、文化財観光の振興をめぐって「一番がんなのは学芸員」と語るなど、無理解に基づく暴言も問題になった。
たび重なる失言に、自民党執行部も厳しく対応すべきだ。国際感覚から外れた発言は、日本の国益にとっても大きな損失である。