被爆者が平和賞で演説 「諦めるな」世界で共有を

 ノーベル平和賞の授賞式で被爆者が初めて演説した。カナダ在住のサーロー節子さん(85)だ。

 受賞団体である「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のフィン事務局長がスピーチする際、ともに壇上に上がった。それはサーローさんが各国で被爆体験を証言するなど、核兵器禁止条約の採択に重要な役割を果たしてきたためだ。

 13歳の時、広島で被爆したサーローさんは「私の愛する都市は1発の爆弾で消滅した。住民は燃やされ、炭になった」と被爆体験を語った。 さらに、がれきの中で聞いた「諦めるな。光に向かってはっていくんだ」という言葉を繰り返し、核廃絶を求めた。各国に条約への参加を促すサーローさんには「核兵器は絶対悪」との思いがある。

 フィン事務局長は条約採択を「暗い時代における一筋の光」と評価しつつ、「理想主義者として運動を批判する人がいる」とも語った。

 授賞式には、被爆者の全国組織、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)からも2人が出席した。

 核の非人道性に関心が高まったのは、被爆者が生き証人として運動を続けてきたからにほかならない。

 1982年、国連本部で演説した故山口仙二さんは「ノーモア・ヒバクシャ」と訴えた。今夏亡くなった谷口稜曄(すみてる)さんも2010年、国連本部で被爆で大やけどした背中の写真を手に核廃絶を迫った。

 それでも核保有国による削減は進まず、北朝鮮は核開発を続けている。「生きているうちに核廃絶を」という被爆者の願いと現実とのギャップはあまりにも大きい。

 核保有国や「核の傘」の下にいる日本などは条約に参加していない。米英仏露中の5大国のノルウェー駐在大使は授賞式を欠席した。条約を巡る対立が平和賞の式典に持ち込まれたのは残念でならない。

 河野太郎外相は「核廃絶というゴールは共有している」と談話を発表した。一方、授賞式に出席した松井一実・広島市長は「核に守られていると思うのは錯覚だ」と核抑止力の有効性を否定する見解を示した。

 唯一の戦争被爆国、日本は核保有国と非核保有国の橋渡し役が求められる。被爆者の思いを重く受け止め、条約への対応を再考すべきだ。

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