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連載:社説
2018年1月15日05時00分
原発の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査が進み、既に7原発の14基が新規制基準に適合するとされた。
安倍政権は「規制委で安全性が確認された原発について再稼働を進める」と強調する。しかしその規制委は、一定の地域内にある複数の原発が同時に事故を起こした場合のリスクについて、十分に審査してきたとは言いがたい。
同じ敷地内の複数の原子炉で同時に事故が起きることは想定しているが、近隣の他の原発でも並行して事故が発生する事態は審査の対象外だ。
そうした場合でも、電力会社は混乱せず、事故対応に不可欠な協力会社からの応援をしっかり得られるのか。自治体や電力会社が前面に立つ周辺住民の避難計画にも不安がぬぐえない。
当面の焦点は、福井県の若狭湾沿いである。
関西電力の3原発11基を中心に、14基もの原発が林立する。日本原子力研究開発機構の「もんじゅ」など6基の廃炉が決まったが、関電の高浜原発1~4号機と大飯3、4号機、美浜3号機の計7基が適合とされた。
西から高浜、大飯、美浜と並び、高浜と大飯は14キロ、高浜と美浜でも50キロほどしか離れていない。すでに高浜3、4号機が再稼働し、関電は大飯の2基も順次再稼働させる意向だ。
規制委は新基準で、同一の敷地内ですべての原子炉が同時に事故を起こしても、炉ごとに対処できるよう電力会社に機材や人員の配置を求め、審査してきた。一方、一定の地域内にある複数拠点での同時事故については、議論はしているが課題があると認める。関電も、高浜と大飯の同時事故を想定した防災訓練は昨年1回しただけだ。
住民の被曝(ひばく)リスクや環境への影響をめぐり、根本的な問題も積み残しになっている。
米国は、原発の立地指針で、相互に影響する複数の原発については放射性物質の想定放出量を合算して評価するのを原則とする。日本は災害大国であるにもかかわらずこうした規定がなく、狭い地域に多くの原発を集中させてしまった。
再稼働が進めば、福島の事故でクローズアップされた集中立地の危うさが浮かび上がる。規制委の更田(ふけた)豊志委員長もかつて、新規制基準づくりの議論の中で「個人的には多数基立地ということが非常に気になっている」と述べたことがある。
炉ごとに審査して「適合」判断を重ね、再稼働させていくのでは不十分だ。規制委や電力会社に検討と対応を求めたい。