森友学園との国有地取引に関する公文書の改ざんで、削除部分には、国が否定してきた「価格交渉」や「学園の特別扱い」をうかがわせるような記載が目立つ。だが、異例ずくめの取引の背景や改ざんの真相は今なお見えていない。19日の参院予算委員会の集中審議で解明は進むのか。▼1面参照

一連の土地取引の始まりは2013年7月。資金繰りに余裕がなかった森友学園から財務省近畿財務局への要望はこうだった。

当面は土地を借り、その後に買いたい――。過去5年の同種取引で例がない契約。財務局は、安倍晋三首相の妻、昭恵氏と一緒に写った写真を学園から提示された35日後、「売り払いを前提とした貸し付けに協力する」と学園に伝えた。

財務局は、特例的な契約を認めるよう財務省本省に求めた。申請の文書には、昭恵氏の写真を見せられたことや、政治家側からの問い合わせがあったことなどが記されていた。なぜ昭恵氏らのことを文書に記載し〈図の(1)〉、それが取引に影響したか(2)が焦点の一つだ。

学園は15年3月、土地が「軟弱地盤」だとして貸付料を減らすよう財務局に求めた。財務局は地質調査会社から「特別に軟弱な地盤であるとは思えない」との見解を示されたが、「賃料に影響する」として鑑定をやり直し、それにもとづく貸付料で15年4月に見積もり合わせを実施した。貸付料の修正が適正だったのかも問われそうだ(3)。

貸し付け合意後の15年7~12月、学園は費用を立て替えて汚染土などを撤去。国が費用を払うのは、民法上は土地が返ってきたときでいいが、学園に対しては予算措置が済めば速やかに支払うことにした。

学園は費用の支払いについて15年秋、昭恵氏付の政府職員に財務省への問い合わせを依頼。同省は「16年度での予算措置を行う方向で調整中」と答えたが、職員が問い合わせた理由や、取引に与えた影響も疑問が残ったままだ(4)。

16年3月、学園は「新たなごみが見つかった」と財務局に連絡。ごみ撤去費を差し引いた額で土地を買いたいと申し出た。16年6月の売却契約までの協議で価格交渉があったのではないかという疑念を、佐川宣寿・前財務省理財局長は国会で否定し続けた。

だが、財務局職員が「ゼロに近い金額まで努力」などとする音声データの内容が昨年発覚。売却契約の決裁文書には改ざん前、「価格等について協議した」と記載されていたことも分かった。佐川氏の答弁が虚偽だったのか、事前の価格交渉なら学園の特別扱いを示すことになるのではないかが問われている(5)。

大幅値引き問題の発覚から1年あまり。会計検査院は値引きの根拠になったごみの量について「根拠が不十分」とし、政府側の説明に納得できないという声は今も強い(6)。

財務省、動機は 首相らの答弁、影響か

財務省は12日、財務局や本省理財局が2014年6月~16年6月に作成した14件の決裁文書を、土地の大幅値引き問題が発覚した後の昨年2月下旬~4月に書き換えていたと明かした。

改ざんの理由について麻生太郎財務相は同日、「佐川(宣寿・前理財局長)の答弁と決裁文書との間に齟齬(そご)があった」と説明。太田充理財局長は16日、「(国会では)総理や大臣の答弁もあった。政府全体の答弁を気にしていた」と述べ、安倍晋三首相らの答弁の影響にも触れたが、明確な動機は明らかにされていない(7)。

改ざんの行為や指示に佐川氏が関わったのか、佐川氏がなんらかの指示を受けたのかなども説明が求められる(8)。

12日に財務省が書き換えを認めた後、政府の説明にほころびも出た。国土交通省が、保管していた改ざん前の一部文書を5日時点で財務省に渡していたことや、首相官邸にも報告していたことが判明。6日に安倍首相菅義偉官房長官も報告を受けていたことが分かっている。

首相は14日の国会答弁で、自身が報告を受けた時期を「11日」と述べた。菅長官は「(6日は)最終的に文書を確認できる段階になかった」と説明しているが、整合性を問われる事態になっている(9)。

■<解説>公文書の軽視、背景に

「国が意思決定を適正かつ円滑に行うためにも、国の説明責任を適切に果たすためにも必要不可欠」――。公文書の管理について、福田康夫首相の下で発足した政府の有識者会議は2008年の最終報告でそううたっている。提言に基づき、公文書管理法は、麻生太郎政権下の09年に制定された。そのルールを破り、公文書を隠す目的で、ウソの公文書を作成したのが、森友学園の決裁文書をめぐる財務省のふるまいだ。公文書は「民主主義の根幹を支える基本的インフラ」だが、その精神を軽視する姿勢が今回の改ざんにつながっている。

公文書の管理について、もともと日本には監視・監督・指導をする機関がなく、公務員の都合で廃棄したり隠したりする不祥事が相次いだ。公文書管理法では首相に、各省庁に改善を勧告したり、報告を求めたりする権限を与えた。

ただ、実務を担う内閣府の公文書管理課職員は15年度で19人。米政府の国立公文書館記録管理庁(NARA)に3千人近くの職員がいるのに比べ、日本の態勢は貧弱だ。しかも、森友問題での財務省や、南スーダンに派遣された自衛隊の「日報」を隠した防衛省のように「保存期間1年未満」で廃棄扱いにするなど、その監視を実質的に逃れる手法が横行している。特に、メールなど電子データは廃棄が常態化。その揚げ句に決裁文書の改ざんとそれに伴う元文書の隠滅まで行われていた。一方、米政府は、幹部公務員のメールを全て自動的に保存する仕組みを導入している。

内閣府の公文書管理委員会の委員を務める三宅弘弁護士は「日本は周回遅れ。極めて立ち遅れている」と嘆きつつ、こう提言する。

「定年で退職した公務員を雇って、せめて数百人の態勢にし、各省庁に『この文書を残してくれ』と言えるようにしなければならない。また、文書を決裁したらその電子データも自動的に確定する仕組みにしたほうがいい」

(編集委員・奥山俊宏)