Photo:首相官邸HPより

 森友学園に対する国有地の大幅値引き売却をめぐって、財務省による決済文書の改ざんが発覚した。27日、行われたキーマンの佐川宣寿・元理財局長の証人喚問では、佐川氏は改ざんの動機や自らがどう関わったかは、「刑事訴追の恐れがある」ことを理由に明らかにしなかった。その一方で、首相や昭恵夫人、官邸の「関与」については明確に否定した。根拠を何ら示さずに断言答弁する姿勢も変わっていない。

 政権が描く幕引きのシナリオ通り「トカゲのしっぽ切り」の「しっぽ」を忠実に演じようとしているような印象だ。

佐川氏喚問で「幕引き」狙い
真実を知る人物は「隔離」

 証人喚問では「刑事訴追の恐れがある」とした証言拒否は少なくとも46回を数える。「刑事訴追の恐れがある」が「文書は消去した」に取って代わっただけで、説明責任を果たそうとしない姿勢も相変わらずだ。

 だが国会証人喚問での「訴追の恐れ」で証言拒否できるのは、犯罪行為にかかわる事項だけでだ。そう考えると、証言からいくつもの疑問がわいてくる。

 たとえば、昨年3月15日の国会答弁について契約文書を見ていたかどうかを言えないということは、その時点で犯罪行為にかかわるという認識があったということだ。

 ならば、佐川氏の答弁に応じて文書が改ざんされたのではなく、2月17日の安倍総理の総理も国会議員も辞めるとの国会答弁を受けて、契約文書の改ざんが同時進行していた可能性を示唆していることにならないか。

 これまで「交渉記録も面談記録も消去した」を盾に事前の価格提示を否定してきたが、あの発言は「文書管理規則」を説明したものだという証言にも無理がある。

 さらに、国会答弁を大臣官房にもあげていたかと問われて、形式的には大臣官房にあげるが、実質的にはあげていない、という証言も無理がある。

 首相や昭恵夫人との「親交」を誇示する籠池夫妻が経営する森友学園に、「便宜供与」が行われたことはなかったのかどうか。

 国有地貸し付けから売却に至るまでに、定期借地権設定、「価格非公開」、そして大幅値引きという異例ばかりの「特例的」な案件について、誰が何を目的に指示をして決裁文書の改ざんが行われたのか、はっきりさせねばならない。

 その際、真実を知る者が実質「隔離」されていることが真相の解明を妨げている。

 与党は、佐川氏の証人喚問で収束を図ろうとしており、昭恵夫人の証人喚問には応じない構えだ。

 田村嘉啓国有財産審理室長に「口利き」のファックスを送った総理夫人付けの政府職員の谷査恵子氏は、事態が発覚するや、イタリア大使館一等書記官に異例の昇進をし、海外にいる。

 さらに、証拠隠滅や逃亡の恐れのないにもかかわらず、籠池夫妻は、詐欺罪を適用され「容疑者」のまま7ヵ月も拘留されている。

隠ぺい、恣意的データ作り
文書改ざんの横行

 政権の「隠ぺい体質」が浮き彫りになったのは森友疑惑だけではない。

 安倍政権になってから、証拠になる政府文書を隠す、都合のいいデータを作る、時には政府文書そのものを改ざんする、といった事態が横行している。

 安倍首相の「長年の友人」の加計孝太郎氏が理事長をする加計学園の獣医学部新設をめぐる疑惑問題でもそうだった。

 昨年7月に、獣医学部新設4条件を満たしているかどうか非常に疑わしいまま、加計学園を国家戦略特区(今治市)の事業者に決定した。この問題を追及されて、松野博一文科相は、2016年9?10月に行われた内閣府と文科省の会合記録文書の存在を否定した。その文書には「総理のご意向」と書かれた文言が含まれていた。

 ところが、前川喜平前事務次官が文書の存在を確認すると、文科省は「再調査」で文書があったことを認めた。それでも、「総理の意向」を文科省担当者に伝えたとされた萩生田光一官房副長官(当時)、和泉洋人首相補佐官らは「記憶にない」で押し切った。

 さらに、事業者決定を審議していた内閣府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の議事録でも、常識では理解できないことが起きていた。

 事業者決定の前の段階で、今治市職員と加計学園関係者がこの会議に参加していたが、この時の事前参加の記録は「未記載」だった。そして、国家戦略特区WGの「議事要旨」部分について、2016年12月に開示されたものは大半が黒塗りされ、その分量は約2頁ページ半あったが、17年8月の開示分では1ページに短縮されていた。ここでも文書改ざんの疑惑が浮上している。

 また安倍首相自身も、加計氏を長年の友人と認め、ゴルフや会食を繰り返していたにもかかわらず、加計学園が特区の事業者に決定したことを正式に決定した「17年1月20日に初めて知った」という。

 いかにも不自然な答弁を国会でしたが、それ以前に知っていれば、関係業者の供応接待や便宜供与を禁じた大臣の服務規定(国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範)に反することになる。

 同じ頃、南スーダンPKOの日報隠し問題も露見した。

 陸上自衛隊がPKOで派遣されている南スーダンが実質的に「戦闘状態」に陥っていることが書かれていた「日報」を、防衛省は当初「廃棄済み」としていた。

 しかし、その後、電子データが発見されたことを知りながら、稲田朋美防衛相と黒江哲郎防衛事務次官が隠蔽した。隠蔽が発覚して稲田防衛大臣は粘ったあげくに、世論の批判が強まり、ようやく辞任した。

 最近では、「働き方改革」で、質問事項の違うデータを“恣意的”に使って、政府は裁量労働の方が一般労働者より労働時間が短いと主張した。

 当初、加藤勝信厚労相は、国会などでの追及に対して「個票データはない」としていたが、これも、後日、本省内の地下室から大量のデータ資料が出てきた。

 そこには、残業時間の数値が勤務実態と矛盾するなどの「不適切データ」がたくさん含まれており、役に立たない調査であることが露呈した。

 このように見てくると、財務省だけ、あるいは佐川宣寿氏ひとりが改ざんをしたとは考えにくい。これは安倍政権の体質の問題だと考えざるを得ない。

 内閣府人事局を設置して600名もの霞ヶ関の幹部人事を握ることで、官邸の意向を推し量って、政権の都合のいいように使える「忖度官僚」を生み出し、本来は、中立公平であるべき官僚制そのものを壊した。

 国会に出てくるすべての資料は虚偽でできているとすれば、もはや国会審議は何の意味も持たなくなる。

 そして、いったん権力を握れば、どんな不正も腐敗行為も行うことができるようになってしまう。国の統治機構そのものが崩壊してしまう事態に直面していると言えよう。

「原発再稼働」でも
首相側近が官邸を仕切る

 こうした「崩壊」現象が顕著になったのは、福島原発事故の処理から始まっているように思える。

 3月17日付の朝日新聞によれば、福島原発事故が起き、1~4号機が次々に水素爆発を起こしていた2011年3月12日~15日に、松永和夫経産事務次官(当時)は寺坂信昭保安院長に「再稼働を考えるのが保安院の仕事だ」と言い放ったという。

 新潟県と東京電力ホールディングスとの合同検証委員会によれば、清水正孝東京電力社長(当時)が、事故を過小に見せるために、炉心溶融(メルトダウン)という言葉を使わないように社内に指示していたとされる。

 未曽有の原発事故という危機の状況で、情報の混乱や情報の開示自体が新たな不測の事態を招きかねないリスクを考えざるを得なかった面があったことは確かだ。

 だがこれ以降、情報を隠蔽し、内々で物事を進めるやり方に抵抗が薄れ、一部の首相側近が情報を管理し、さらには情報を統治に都合よく使って、ということがひどくなった。

 「原発再稼働」でも、今井尚哉政務秘書官を筆頭に、経産省(資源エネルギー庁)や電力会社などの「原子力ムラ」の面々が、公安警察出身の長田和博官房副長官と戦前の特高警察を礼賛する論文(「外事警察史素描」(『講座警察法』第三巻)を書いた北村滋内閣情報官らと連携して、政権を動かしている。

 ちなみに、今井政務秘書官は、昭恵首相夫人付き政府職員で、財務省の田村国有財産審理室長に、森友学園の土地取引について「問い合わせ」をするファックスを送った谷査恵子氏の上司にあたる。

 国民に対しても、前言を翻し「嘘」をつくようなことも起きている。

 自民党が政権を奪回した2012年12月の総選挙では、安倍自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」を掲げていた。

 ところが、第2次安倍内閣は発足早々、政府と国会の事故調査委員会の報告書を無視し、フォローアップする有識者会議も設けずに福島原発事故の原因究明を放り投げ、十分な避難計画も整備しないまま原発再稼働へ動いてきた。

 そして、2013年9月7日、東京オリンピック・パラリンピックを誘致するために出席したIOC総会では、安倍首相は、福島原発の状況を「アンダーコントロール」と述べ、公然と嘘をついた。

 その後も、政府のエネルギー計画策定で、原発を「ベースロード電源」とし、全電源に占める原発の比率を「20~22%」と、「脱原発」の流れを逆戻りさせ、再稼働に邁進していく。

 2016年12月9日に、経産省「東京電力改革・1F問題委員会」は福島第1原発の事故処理費用が11兆円から約22兆に倍増したと発表。東電幹部の経営責任や監督責任を問わないまま、処理費用のうち2兆円を税金でまかない、7~8兆円を託送料金に乗せる方針を出したのである。

長年の友人や近い関係者を“優遇”
異論や批判は封じ込める

 森友問題をはじめとした様々な疑惑や国民を欺くような背信行為を生み出した背後にあるのは、安倍政権の時代錯誤的なクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)にある。

 縁故資本主義とは、民主主義的チェックが働かず、権力者周辺に利益がばらまかれる経済体制をさす。

「アベ友」と呼ばれる一部の親しい関係にある人や逆らわない人に利益を誘導する一方で、異論や批判を力で封じ込めてしまうやり方だ。

 このことが典型的に現れているのが金融政策だろう。

 まず、日銀の政策委員の多くを「リフレ派(インフレターゲット派)」で固めることによって、「2年で」としていた2%の物価上昇目標実現時期が6回の延期を余儀なくされても、「政策的失敗」に対する根本的な批判を封じ込めてしまった。

 その結果、いまや日銀の金融緩和政策は出口のないネズミ講のようになっている。

 日銀が金融緩和を止めたとたん、株価が暴落し、金利が上昇して国債価格が下落して日銀を含む金融機関が大量の損失を抱え込んでしまう状況だ。

 産業政策もおかしな事例が続出している。

 新しい生命科学(ニューライフサイエンス)分野で、国家戦略特区の事業者に指定されたのは、鳥インフルエンザの研究実績のある京都産業大学を押しのけて、加計学園獣医学部だった。

 加計学園は高齢化した教員構成や設備の不備も指摘されていたが、モデル事業者として選ばれた。

 コンピュータ開発では、ペジー・コンピューティング社による補助金の不正受給、詐欺事件が起きた。

 スパコンにかかわって成立した国際特許がなく、高度な科学計算論文もなく、実用性がなく民間納入はない、ただベンチマークとなるコンピュータ速度だけを上げるスパコンに100億円近くの資金が注ぎ込まれてきた。

 とくに科学技術振興機構(JST)は2週間緊急募集でまともな審査を行ったかも疑わしく、しかも9割返還の必要のない52億円の融資を垂れ流した。

 社長の斉藤元章は自ら役員に収まっていくつも会社を作るという手法を使っていた。そして同社への助成金支給を媒介したのは、「準レイプ疑惑」の元TBS記者だと言われているが、この人物も、『総理』という著作で知られ、安倍首相と近い関係が指摘されている。

 原発でも、アメリカで相次ぐ原発の建設中止・中断によって東芝が経営危機に陥っているにもかかわらず、政府は、総額3兆円という日立のイギリスへの原発輸出プロジェクトを推進するために、政府系金融機関を使って出資させ、メガバンクの融資についても政府保証をする方針を出している。

 福島原発の事故処理・賠償費用を国民負担させている東京電力にも出資させる計画だ。

 原発はいまや採算がとりにくくリスクが高い事業で、へたをすれば事業の失敗は国民の税金で後始末を余儀なくされる可能性が高い。

 この時代錯誤的な原発輸出を担う日立会長の中西宏明氏も安倍首相と近い関係にあり、しばしば会食する間柄だ。

 大手建設会社4社の談合が表面化し逮捕者も出たリニア新幹線の場合も、JR東海の葛西敬之名誉会長が安倍首相の長年の友人として知られている。

 安倍首相と友人関係にある人物らが担う事業に多額の国家資金が注ぎ込まれている構図だ。

 すでに、日本の産業競争力は衰弱の道をたどっている。

 この“縁故資本主義”は、競争力を失った遅れた産業に巨額の資金を注ぎ込んで旧体制を支える一方で、新しい先端産業分野では不正・腐敗行為をもたらしている。

 だが公正なルールを失ったところに健全な競争はなく、やがて国際競争力を一層失わせていくことになるだろう。

「一強政治の弊害」は日本経済までも蝕む事態になっている。

(立教大特任教授・慶応大名誉教授 金子 勝)