
東京五輪に向けて物流の統制が始まった。
今月1日、東京・千駄ケ谷一帯のマンションなどにアンケート用紙が投函された。「東京2020大会競技会場周辺にお住まいの方々へ」と題した宅配便への意識調査で、差出人は「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」と記されている。
内容は「(2年後の五輪で)選手や観客等が予定した時間に競技会場に到着できるようにするとともに、同時に、市民生活や社会経済活動も維持することを目標としています。しかし、競技会場周辺では、選手や観客等による混雑が想定されていることから、周辺道路の混雑の緩和のための方策について検討を行う必要があると考えております」というもの。
その上でEC(インターネットを利用した商品・サービスの購入)による宅配便の利用について「宅配便をどの程度利用していますか」「再配達となる割合はどの程度ですか」などの質問が列記されている。
このアンケートの巧妙な点は今月11日に開催される神宮外苑花火大会での道路の混雑ぶりに触れ、当日の宅配便の受け取りについて「配送日を変える」「配送時間を変える」「再配達を控える」などの協力を要請していること。目前の花火大会を引き合いに出して、2年後の五輪期間中も「ネット通販を控えて」と協力を呼びかけているのだ。住民の「自粛」喚起の魂胆がミエミエである。
念のため東京都に確認したところ、「これまで神宮の花火大会に際して宅配便の自主規制をお願いしたことはない」(オリパラ準備局)とのことだった。
東京五輪はなんか変だ。2日、鈴木俊一五輪相は、経団連、経済同友会と面会し、五輪の運営を支えるボランティアへの社会人の参加促進への協力を要請。企業にボランティア休暇制度の整備などを働きかける方針だ。国が、会社を休んで五輪のボランティアをやれ、ネット通販を控えろと国民に働きかけていることになる。
元衆院議員で政治学者の横山北斗氏が言う。
「このアンケートの本質は『あなたは目前の花火大会への対応ができますね』と相手をその気にさせ、『だったら五輪でも協力してもらえますね』と語りかけていること。一種の洗脳です。すでに五輪という国策事業に協力しない人は非国民という雰囲気が醸成されています。哲学者のH・マルクーゼが定義した『笑顔のファシズム』です。国民は五輪に歓喜しているうちに国家に統制される。五輪後も国家に飼いならされるような気がします」
日本の五輪は単なるスポーツの祭典ではない。
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