【書評】「21世紀 健康への展望」 若月俊一 佐久総合病院

【書評】「21世紀 健康への展望」 若月 俊一 佐久総合病院
(副題) 医療 健康づくり プライマリヘルスケアを考える
(大谷藤郎著,メヂカルフレンド社刊,1980年2月13日発行)

文献概要
この本には,プライマリヘルスケアに関するアルマ・アタ国際会議の報告がくわしく載
っている,じつは,私も昭和53年9月のこの会議に呼ぼれていた.国際農村医学会(IAA
MRH)の代表としてである.ところが,丁度その同じ日にIAAMRHの第7回大会が,アメリ
カのソートレーク市にあった.そこで止むなくアルマ・アタは欠席したのであるが,大
谷先生によって書かれたこの本によって,その内容をよく知ることが出来たのみならず
,世界の健康戦略に関するWHOの深い哲学を教わることになったのである.その会議を
主導したWHOの事務局長マーラー博士の大きな意気込みを,まざまざと表現している先
生の筆鋒にも深く感銘を受けたのである.
本書の第1部は,「医療の展望」(宮城県医療社会事業大会),第2部は,「国民健康づ
くり計画とは」(中央保健婦研修会),そして第3部が,「世界のプライマリヘルスケ
ア」(アルマ・アタ国際会議のリポート)なのである.この三つはそれぞれ独立したも
のではあるが,「保健医療の原点に立ちもどって,しかも,21世紀の未来を指向する観
点では共通しているし,結局は良きcommunityづくりに帰するという点では全く同じ内
容」という.

medicina 24巻8号掲載 発行日 1987年8月10日

https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1402221072

大谷藤郎「21世紀 健康への展望」(1980)メヂカルフレンド社
第3部 世界のプライマリヘルスケア

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(1) アルマ・アタにおけるプライマリヘルスケア国際会議を考える

1 アルマ・アタの素顔

アルマトウの廃墟のうえに

高くまぶしく白熱の太陽が輝いている夏の中央アジア草原。
その果てしなくひろがっている彼方の青空に、
白雪をきらめかせてアラタウの山々の鋭い稜線が続いています。
それは、ヒマラヤ・天山山系に連なって世界の屋根をなし、
遠く中国、インドへと続いています。

この雄大なアラタウの青い山々のふもとに、白い砂嵐が時に高く
舞いあがるなかから、緑につつまれたオアシス都市アルマ・アタが現れます。
かつてはローマからマルコポーロが、あるいは中国や西域の旅行者が
隊商とともに砂漠の砂ぼこりにまみれてたどりつき、
眼前に幻のように現れた緑の都市に讃嘆の声を放ったといわれます。
2千年も3千年もの昔から東西を結んだシルクロード北路の要衝、
当時アルマトウと呼ばれたこの古い都市もいつしか歴史に埋もれて
栄華の影もなかったのですが、第2次大戦後、その廃墟のうえに新興都市
アルマ・アタが建設され、不死鳥のようによみがえり、発展したのです。

広大なソビエト連邦の、そのまた8分の1の広さを誇る砂漠と草原の国
中央アジア・カザフ共和国の首都、人口90万人の近代都市アルマ・アタ!

そこで1978年9月6日から12日まで、WHOとUNICEFが共催して
世界134か国、約500名の政府代表と200名の非政府機関
および国際機関代表、それに1000名近い地元のオブザーバーを
市の中心にあるレーニンパレスの大会議場に集めて、世界はじめての
プライマリヘルスケアの大国際会議が開かれることになったのです。
世界の一部の人々にしか知れていなかったアルマ・アタの近況紹介とともに、
会議への招待状がジュネーブのWHO本部から世界の国々に届けられたのです。

さあ、アルマ・アタへ!

モスクワをこえて砂漠を飛ぶ

歓迎の花束

なぜカザフ共和国の首都アルマ・アタか

ソ連の社会経済開発のモデル

カザフは人種のルツボ ー 多民族国家だ

しかし、中国は反対した

世界のプライマリヘルスケアの二大潮流 
ー 中国方式かソ連方式か ー

2 アルマ・アタにおける国際会議の報告

レーニン・パレスにおける開会式

WHOが示した6項目の目標

八つの質問に答えよ ー WHOマーラー事務局長の呼びかけ

・1・ 
あなたは健康を「もてる者」と「もたざる者」との間にある格差に対して
真剣にとり組み、その格差を縮めるための具体的対策をたてていますか?

・2・
あなたは健康を促進するため、社会経済開発の一環として
他の関連分野との協同的努力のもとに、プライマリヘルスケア
の正しい計画や実践を行なおうとしていますか?

・3・
あなたは社会的弱者に最優先で保健資源の特別分配をしていますか?

・4・
あなたは個人、家族、地域社会がプライマリヘルスケアについて
十分認識し、その計画や運営に参加し、その適用に寄与するよう
彼らに働きかけ、啓発していますか?

・5・
あなたは可能な費用で、今後20年以内に全国民にプライマリヘルスケア
をゆきわたらせるのに十分かつ適切なマン・パワーや技術の活用を
はかるよう、必要な改革を提案していますか?

・6・
あなたは現行の保健配分システムのなかで、プライマリヘルスケア
を適切に支えるような抜本的な変革を提案していますか?

・7・
あなたはプライマリヘルスケアを広めることに対して
どのような社会的、経済的妨害や職業上の抵抗があっても
それを打ち負かすような政治的、技術的戦いをいどんでいますか?

・8・
あなたは「紀元2000年までにすべての人々に健康を」という目標に
到達させるため、プライマリヘルスケアを採択し、
国際的団結を促すような明白な政治的公約をしていますか?

(開会式におけるWHO事務局長 Dr. H.マーラーの演説)

子どもを守る立場から ー ユニセフ・ラブイス事務局長の考え

(開会式におけるユニセフ事務局長 H.R.ラブイスの演説)

延々続いた総会演説 ー 目だった南北の姿勢の違い

エドワード・ケネディはやって来た

3分科会の討議と22項目の勧告

3 アルマ・アタ宣言

「アルマ・アタ宣言」が採択された

「アルマ・アタ宣言」には何が書かれているか

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(2) WHOの主張するプライマリヘルスケアとは何か

1 WHOの主張

それぞれ違うプライマリヘルスケアの意味

WHOのいうプライマリヘルスケアの定義

WHOのいうプライマリヘルスケアの内容

WHOは具体的な業務として何を考えているか

プライマリヘルスケアに従事する人的資源

医学の普遍化

プライマリヘルスケアにおける中央と地域社会の役割

2 WHOのそれまでの経過

理想主義かパワー・ダイナミックスか

プライマリヘルスケアの提唱まで

1973年 マーラー事務局長の登場 don’t adopt- adapt

3 WHO主張の背景 
ー 激動する世界政治の現実とプライマリヘルスケアのヒューマニズム

プライマリヘルスケアは社会正義である

戦後における南北問題

新国際経済秩序が宣言された

ベイシック・ヒューマン・ニーズ BHN 論

アプロプリエイト・テクノロジー AT 論

激動する国際世論のなかで

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(3) 世界各国におけるプライマリヘルスケア

1 開発途上国と先進国

2極化に向かう開発途上国

ソ連のプライマリヘルスケア

生きているドーソン報告

イギリス NHS の機構再構成 ー 予防と治療の包括化へ

ヨーロッパ地域の考え方

アメリカにおけるファミリー・フィジシャンとプライマリケア・チーム

2 わが国の場合

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(4) 21世紀までにすべての人々に健康を ー WHOのスローガン

WHO のこれからの戦略

すべての人々に健康を

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MLホームページ: https://www.freeml.com/uniting-peace

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