山下龍一
2018年8月29日05時02分
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画で、沖縄県は辺野古沿岸部の埋め立て承認を31日に撤回する方針を固めた。急逝した翁長雄志(おながたけし)知事の意向や、9月に県内で知事選を始め多くの選挙があることを踏まえ、8月中の撤回実施が最適と判断したとみられる。
「撤回」は埋め立て承認の効力を失わせるもので、実施されると移設工事はストップする。政府は対抗策として、撤回の効力を失わせる執行停止を裁判所に申し立てる構えだ。
知事の職務代理者となった富川盛武副知事や、富川氏から撤回の権限を委任された謝花(じゃはな)喜一郎副知事は28日、弁護士らを交えて検討し、31日の撤回実施を決めた。
政府は17日にも沿岸部に土砂を投入すると県に通知していた。翁長氏は土砂投入前の実施を念頭に、7月27日に仲井真弘多(ひろかず)・元知事による埋め立て承認の撤回を表明。両副知事らは、翁長氏の急逝後も撤回に向けた手続きを進めていたが、政府が土砂投入に踏み切るタイミングもにらみながら、時期を慎重に検討してきた。
両副知事らは、翁長氏の支持者や「オール沖縄」勢力から、県知事選(9月30日投開票)の前哨戦とされる名護、宜野湾の両市議選などが告示される9月2日より前の撤回実施を求められていた。また、知事選に立候補する意向の玉城(たまき)デニー衆院議員(58)や、擁立を決めたオール沖縄勢力を後押しするため、移設工事を止めた状態で知事選を迎えたいとの考えもあるとみられる。
撤回に伴い、政府は効力を失わせる執行停止を裁判所に申し立てる意向だ。政府側の主張が認められた場合は、申し立てから、数週間~数カ月後に工事を再開できるようになる。
その場合でも現地への土砂投入を実行すれば、県民の反発を招く可能性が高く、知事選に影響する。このため、政府は土砂投入に踏み切るタイミングについては慎重に判断する方針で、知事選後に先送りすることも選択肢としている。そうした政府判断が、今後の焦点となる。(山下龍一)
沖縄関連の今後の主な日程
9月2日 名護、宜野湾の両市議選など告示
9日 両市議選など投開票
13日 県知事選告示
辺野古への移設工事差し止めを県が国に求めた訴訟の控訴審が結審
20日 自民党総裁選
23日 宜野湾市長選告示
30日 県知事選投開票
宜野湾市長選投開票