
“圧力バカ”を絵に描いたような話だ。自民党が総裁選の扱いについて、新聞・通信各社に「公平・公正な報道」を求める文書を配布した。その注文の仕方は非常に細かい。
総裁選管理委員会の野田毅委員長名で配った文書は、記事内容や写真の掲載面積にいたるまで「必ず各候補者を平等・公平に」扱うように要求。各候補のインタビューの掲載日が異なる場合は、別の候補の名前も書けとまで注文を付けた。
配布は28日で前日と当日に読売、日経、共同通信、産経が世論調査の結果を発表。いずれも「次の総裁にふさわしい人」で、石破元幹事長の支持率が安倍首相を猛追し、差は全て1桁台だ。安倍応援団の大新聞でも「僅差」の結果に、またも周辺が圧勝戦略を描く安倍首相に忖度。石破猛追は報じ方のせいだとの難クセで、圧力文書を突きつけたのは想像に難くない。
4年前の総選挙でも、自民党は安倍首相の意向をくみ、放送局に関連番組のゲストやテーマ選び、街の声の扱い方など詳細に項目を挙げ「公正な報道」を求める文書を送りつけた。当時も「前代未聞の報道圧力」と批判されたが、懲りていない。
そもそも「公平・公正」を求めるほど、この総裁選で安倍首相は報道に値する行動を取っているのか。石破氏が連日のように記者会見を重ねる一方、安倍首相は“逃げ恥”作戦を徹底。石破氏が求めた政策テーマごとの討論会を拒み、記者会見を含め質問に答える形式を極力避け続けている。
■「器が小さすぎる」
最優先の地方行脚も「講演は当たり障りのない話だけの“独演会”」(ある地方の党員)で、中身ゼロ。地方議員の要望に珍しく耳を傾けると、「ピンと来ないのか、『そうだよね』と漏らす程度の反応」(自民党関係者)というありさまだ。
「安倍さんは総裁候補以前に一国の首相です。一挙手一投足がメディアに注目されるのは当然。討論から逃げ、露出を控え、考えもロクに伝えずに『公平・公正』な扱いだけを求めるのは器が小さ過ぎます。トランプ米大統領に『真珠湾攻撃を忘れないぞ』と伝えられたとする米紙報道も、総裁選中のロシア訪問も、大きく扱えば不平等なのでしょうか。支離滅裂な政治介入を突き返すべきなのに、メディアの批判報道は少ない。だから、自民党にナメられるのです」(法大名誉教授・須藤春夫氏=メディア論)
へそで茶を沸かす圧力文書は日刊ゲンダイには届いていないが、当然これまで通りの姿勢で総裁選を報じさせてもらう。
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