日本で暮らす外国人留学生や技能実習生が増える中、仕事や生活で追い詰められ、命を落とす若者もいる。ベトナム人の尼僧がいる東京都内の寺には、そんなベトナムの若者の位牌(いはい)が増え続けている。外国人が働きやすい環境の整備や暮らしへのサポートが必要だと、専門家は訴える。

 東京都港区にある寺院「日新窟」。棚の上に、ベトナム語で書かれた真新しい位牌がぎっしりと並ぶ。2012年から今年7月末分までのもので81柱。この寺の尼僧ティック・タム・チーさん(40)によると、その多くが、20、30代の技能実習生や留学生のものだ。今年7月には4人の若者が死亡。3人が実習生、1人は留学生で、突然死や自殺などだった。

 7月15日に自殺した25歳の技能実習生の男性は、会社や日本に住む弟、ベトナムの家族に遺書を残していた。塗装関係の仕事をしていたが、「暴力やいじめがあってつらい」とつづられていた。「寂しい。1人でビールを飲んでいる」と弟に電話があった翌日、川辺で首をつっているのが見つかった。

 6月に亡くなった31歳の男性の死亡診断書には、死因は「急性心機能不全症」と書かれていた。別の20代の技能実習生の男性は朝、仲間が部屋に起こしに行ったら、死んでいた。

 タム・チーさんは00年に来日以来、こうした実習生らの様々な相談に応じてきた。妊娠して途方に暮れる女性のために出産できる場所を探したり、本国で生まれた赤ん坊を預かってくれる人を探したり。今月も北海道の海岸で留学生の遺体が見つかり、葬式をあげてきた。「実習生や留学生は言葉の壁もありストレスが大きい。節約してカップラーメンを食べて栄養不足になっている。一生懸命働いて、無理をして、体も精神も不安定になるケースが多い」と話す。節約は多くの場合、来日のために背負った借金の返済や、家族への仕送りなどのためだ。

 実情に詳しい山村淳平医師(63)は、「元々健康だった20、30代の人が突然に亡くなるのは異常なこと」と話す。「十分な睡眠もとらず、過剰な労働によるストレスやプレッシャーが体をむしばんでいく」

 山村さんは3月にベトナムを訪問し、昨年末に宮城県で亡くなった20代の男性の父親に会った。男性は現地のブローカーを通じ、約120万円を払って来日。結婚資金などを稼ぐためだった。送り出し団体から「心臓の病気で亡くなった」と連絡があり、遺骨が届けられたという。

 山村さんは「いびつな日本の政策の犠牲者」と感じている。「労働者としてきちんとした条件で雇うべきなのに、実習生や留学生として働かせ、結果、心と体への負担がかかっている。国は実態を把握し、予防策をとるべきだ」と話す。

 法務省によると、日本に暮らすベトナム人は07年は3万6131人だったが、17年は26万2405人と約7倍に急増。良好な日越関係や日本の労働力不足を背景に増え続け、フィリピンを抜き、中国、韓国に次ぐ多さとなった。技能実習生は15年末は5万7581人だったが、16年末に最も多かった中国を抜き、17年末は12万3563人。2年間で2倍となった。

 外国人留学生や技能実習生の自殺や突然死の総数は明らかではないが、実習生の受け入れの支援をする民間公益法人「国際研修協力機構(JITCO)」の報告書によると、16年度に事故や病気などで亡くなった技能実習生や研修生は28人。脳・心疾患が8人で全体の約3割を占めた。(平山亜理

技能実習生の問題に詳しい指宿昭一弁護士の話

 待遇や体調が悪くても、ものを言いにくい技能実習制度の構造的な問題があるのではないか。来日前に保証金などで借金を背負わされたうえ、送り出し機関から労働基準監督署や弁護士への相談を禁じられるケースもある。留学生も同様に借金を抱え、法定の週28時間を超えて働かざるを得ない状況に置かれる場合が多い。送り出し機関との悪質な取り決めを改めさせるとともに、日本には労災制度や各種相談窓口があることを、本人や母国の家族に周知することも必要だ。