世界の貧困・飢餓人口の約80パーセントが農村地域で生活
図1 世界の農場数の90パーセント以上が家族農業である(FAO2018)
図2 家族農業は世界の農地の70から80パーセントを占めている(FAO2014
)
図3 世界の食料の80パーセント以上を家族農業が供給している(FAO2018)
図6 家族農業は魚介類の消費量の60パーセント以上を供給している(FAO201
8)
図7 世界で2億から5億人と推計される牧畜家は、地球の地表の3分の1を占める土
地で牧畜や移牧、遊牧を営む(FAO2018)
図11 世界の貧困・飢餓人口の約80パーセントが農村地域で生活しており、その大
部分が農林水産業を生業としている(FAO2018)
家族農業の定義(国連)「家族が経営する農業、林業、漁業・養殖、牧畜であり、男女
の家族労働力を主として用いて実施されるもの」
図12 日本の農業経営体122万のうち家族経営体は118.5万(97パーセント)
である(農水省2018年農業構造動態調査)
国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」
2014年の国際家族農業年IYFFをヘて、2019年から2028年を国連の家族農業
の10年とすることが、2017年12月20日の第72回国連総会で決定された。
日本を含む104ヵ国が共同提案し、全会一致で採択されたことは、世界の農と食をめ
ぐる政策の新たな時代の幕開けを感じさせる。
さらに、2018年12月17日に国連総会で「小農と農村で働く人びとに関する権利
宣言」が採択されたことは、これまでの農業・食料政策を支えてきた理論や前提を大き
く問い直す機運が国際的に高まっており、新たな道の構築がすでに始まっていることを
印象づける。
本章では、国際家族農業の10年が誕生するにいたった経緯、家族農業という概念、
国連の持続可能な開発目標SDGsにおける家族農業の位置づけ、および家族農業の10年
が何をめざすのかなどについて、Q&Aや図解を用いて解説する。
関根佳恵・SFFNJ呼びかけ人代表
国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」 農文協ブックレット20、
その第1章冒頭より
> 家族農業はなぜ「効率的」とみなされるようになったのか?
> >
> > これまで、家族農業は「小規模」で「非効率」、ときには「時代遅れ」の存在
> > とみられることが少なくなく、したがって「大規模化」「法人化」し、
> > 「近代的技術・資本」を取り入れて、経営を「効率化」しなければならない
> > と考えられてきた。
> > 特に、第二次世界大戦後の日本を含む各国の農業政策は、こうした共通理解
> > をもとに「緑の革命」を代表とする近代的農業(機械化、改良品種、
> > 農薬・化学肥料、灌漑等)の普及にまい進してきたといって過言ではない。
> >
> > こうした政策の下では、主に労働生産性(労働時間当たりの生産量・額)
> > の向上が追求され、他産業(農業以外の工業・サービス業)に匹敵する
> > 所得を得られる水準まで経営規模を拡大すること、あるいは、
> > 輸入農産物と市場競争できる水準までコストを低減することが求められた。
> > そのため、こうした政策目標を達成できない小規模な家族農業は
> > 「非効率」であると評価されてきたのである。
> >
> > しかし、時代が変わり、農業に求められる役割が多様化してくると、
> > 農業の「効率性」を測る指標も多様化し、「効率的な農業」像自体が
> > 大きく変化してきた。
> >
> > 第一に、食料問題が大きな課題となり、かつ農地の減少や土壌流亡が
> > 深刻化するなか、土地生産性(単位土地面積当たりの生産量・額)の高い
> > 労働集約的な農業が見直されている。
> > 土地生産性は、粗放的な大規模経営よりも集約的な小規模経営のほうが
> > 高いことが一般的に知られている。
> >
> > 第二に、気候変動への対応のためにも、石油等の枯渇性資源への依存
> > から脱却し、希少化する資源を有効に活用する必要から、
> > エネルギー効率性が21世紀の重要な効率性指標となった。
> > 農業生産のために投入するエネルギー1単位当たりから取り出せる
> > 農産物のエネルギー量を効率化するために、化石燃料への依存度が低い
> > 小規模な家族農業や伝統的農法が再評価されている。
> >
> > 第三に、世界各地で地方経済が停滞し、農村で人口減少と高齢化が
> > 進んでいる。
> > 他方で、多くの国・地域において都市では失業者や不安定雇用が増えており、
> > 特に若年層や移民に対する雇用提供が社会の安定化にとって
> > 喫緊の課題となっている。
> > このような拡大する農村と都市の格差を埋め、国土管理や環境保全
> > のために重要な役割を有する地方、特に山間部・中山間部で
> > 雇用を創出し、地域コミュニティを維持・活性化するために、
> > 小規模な家族農業は重要な役割を果たしていると評価されるように
> > なった。
> > 地域の外の企業を誘致するのではなく、すでに地域で営まれている
> > 家族農業を支援することで、こうした地域に生計を営む機会を
> > 増やすことができる。
> >
> > また、都市農業においても、家族農業は都市への食糧供給や食育、
> > 雇用創出、都市部の生活環境の向上等に重要な貢献をしている。
> > 家族農業のこうした社会的貢献を適切に評価すれば、
> > 家族農業の社会的効率性がみえてくる。
> >
> >
> > (第1章「家族農業の10年」のねらい 執筆・関根佳恵 より抜粋)
> > 国連「家族農業の10年」と「小農の権利宣言」 農文協ブックレット2019
MLホームページ: https://www.freeml.com/uniting-peace