幣原元首相
憲法9条、意義強調…原稿が宮城で見つかる
第二次世界大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)と折衝を重ねて現行憲法の制定を進めた幣原喜重郎(しではら・きじゅうろう)元首相(1872~1951年)が書いたと伝わる原稿が、宮城県加美町で見つかった。「新日本は厳粛なる憲法の明文を以(もっ)て、戦争を放棄し、軍備を全廃した」などと記されており、幣原の平和憲法への思いを伝える貴重な史料となっている。
所蔵していた本間俊太郎・元同県知事(78)によると、衆院議員だった父俊一さん(故人)が幣原の遺族から譲り受けたもの。自宅で俊一さんの遺品を整理していて見つけたといい、近く国会図書館憲政資料室に寄贈する。「年頭雑感」と題してあり、ラジオ放送用の原稿だったとみられる。
原稿はA5判9ページ。署名はなく、作成時期も記されていないが、文中に「講和会議を目前に控え」とあり、サンフランシスコ講和会議(51年9月)があった51年のものとみられる。当時、幣原は衆院議長だった。
文中には、「国民生活の水準はこれに依(よ)って向上せられ、人類一般の幸福をもこれに依って貢献し得られる」とあり、更に、外国からの攻撃への対処が「国民の一大関心事」とした上で、「我国を他国の侵略より救う最(も)効果的なる城壁は、何としても正義の力である」と訴えている。
立教大の粟屋憲太郎名誉教授(現代史)は「幣原が9条への思いを伝えようとしたものとみていいだろう」と指摘する。【山田研】